自動車減税は本当に追い風か?|個人タクシーが喜んではいけない税制改正の裏側

個人タクシーにとっての減税の表と裏

「2026年はクルマの税金が安くなる」
そんなニュースを見て、少し胸をなで下ろした個人タクシーの方も多いのではないでしょうか。

ガソリン税の暫定税率廃止、環境性能割の廃止。数字だけ見れば、確かに“減税”です。しかし、私は現役70歳のタクシー運転手として、少し違う感想を持ちました。

「これは本当に“追い風”なのか?」
そしてもう一つ、「この減税、どこかで必ず帳尻が合わされるのではないか?」ということです。

この記事では、一般ニュースでは語られない「個人タクシーという事業者の視点」から、今回の自動車税制改正を“表と裏”の両面で整理します。

この記事でわかること
  • 燃料税(ガソリン・軽油)軽減が長距離ドライバーにもたらす真の恩恵
  • 環境性能割の廃止で「純ガソリン車」が選択肢に入るメリット
  • EV・PHEVへの課税強化が示唆する「不確実性」という最大のリスク
  • 減税のニュースに踊らされない、プロが持つべき「道具(車両)」の選び方
  • なぜ今、ハンドルを「強く握り直す」必要があるのか

今回の自動車税制改正で「得をする部分」

まず、素直に評価すべき点から見ていきましょう。

①個人タクシーにとって 燃料税の軽減は、走る距離が長いほど効く

ガソリン税の暫定税率廃止、軽油引取税の廃止により、燃料コストは確実に下がります。一般ユーザーが「年間1万km」なら恩恵は1.5万円程度ですが、年間5万km、6万km走る個人タクシーにとっては、年間で10万円近いコストダウンになる計算です。短期的に見れば、これは間違いなく経営の助けになります。

②個人タクシーにとって 環境性能割の廃止で「購入時の負担」が軽くなる

車両入れ替え時にかかっていた環境性能割が廃止されることで、特に純ガソリン車の購入負担が最大3%程度軽くなります。「次は無理にでも高いハイブリッドにすべきか」と悩んでいた方にとって、選択肢が広がるのは安心材料でしょう。

しかし、個人タクシーが見落としてはいけない「裏の顔」

ここからが本題です。今回の改正には、事業者が最も嫌う「不確実性」が含まれています。

EV・PHEVの扱いが不透明になった

今回の改正では、2028年以降、EVやPHEVに対して重量税の「特例加算」が検討されています。つまり、「今は優遇するけれど、数年後はどうなるかわからない」という状態です。

個人タクシーにとって、車は「思想」ではなく「商売道具」です。10年スパンで利益を計算しなければならない中で、数年後にルールが変わるような道具に大きな投資はできないのが現場の本音ではないでしょうか。

減税のあとに来るものを、私たちは何度も見てきた

燃料税が下がり、取得税が軽くなる。一方で、自動車税の抜本見直し(走行距離課税などが議論対象として浮上している)が控えている。これは自動車業界に長くいる人間なら、何度も見てきた「入口を広げて出口で取る」流れです。「今、得をしている」という感覚で、無理な新車購入や業態変更をするのは非常に危険です。

自動車減税の「表」と「裏」早見表

ここで、今回の減税を「表(追い風)」と「裏(注意点)」に分けて、個人タクシー視点で整理してみましょう。

減税の「表」(一見お得に見える部分) 減税の「裏」(見落としがちなリスク)
ガソリン税・軽油引取税の軽減で、燃料コストが下がる 走行距離課税など、自動車税の抜本見直しが議論に上っている
環境性能割の廃止で、純ガソリン車の購入時負担が軽くなる EV・PHEVへの重量税「特例加算」が検討され、不確実性が高い
「減税」のニュースで、心理的な安心感が得られる 「今、得している」感覚で、無理な新車購入・業態変更に走る危険

※「入口で軽くして出口で取る」流れを疑い、減税そのものより「制度の安定性」を見ることが、個人タクシーの経営防御になります。

個人タクシーは「減税」より何を見るべきか

私が個人タクシーの方に伝えたいのは、次の一点です。

税金ではなく、「制度の安定性」を見ること。

  • 部品供給は安定しているか(修理で仕事が止まらないか)
  • 整備コストは読めるか(ハイブリッドのバッテリー交換などの長期費用)
  • 5年後、10年後も「普通」に乗れる制度の車か

減税は「一時的なお祭り」です。しかし、車両選びは「長期の経営判断」です。

まとめ|減税は追い風だが、舵取りを誤ると横風になる

今回の税制改正は、短距離走で見れば追い風です。しかし、マラソンのように長く走り続ける私たちにとって、一番怖いのは「途中で追い風がやみ、逆に強烈な向かい風に変わること」です。

ニュースを見て喜びすぎず、踊らされない。「今日は昨日と同じ車か?」と確認するように、制度の裏側も常に冷静に確認し続けること。その慎重さこそが、結果的に一番の節税と安定経営に繋がると私は信じています。

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