タクシー運転手へのカスハラ問題と経験及び対処法を現役乗務員がアドバイス

タクシーの予約車札 運転免許

昔から社会人としては失格と言うべき一部の人がタクシーに乗り困った問題を引き起こしてきたのはご存じかと思います。

近頃ではカスハラ(カスタマーハラスメント)という用語も使われていますが、主なカスハラは以下の5つに集約できます。

  1. 乱暴な言葉遣いや暴言。
  2. 不当な料金値引き要求。
  3. 経路選択に関する攻撃的な批判。
  4. 酔っ払い客による嫌がらせや迷惑行為。
  5. 無理な要求(危険な運転や法律違反を強要するなど。)
  6. 車内での喫煙や飲食、ゴミ捨てなどのマナー違反。

この記事では、5年間タクシー乗務員として勤務してきた私の経験ではカスハラと言えるような経験は数少ないものですが、他の運転手さんの経験談なども考慮して以下に主なカスハラの種類とその対処法を述べます。

乱暴な言葉遣いや暴言

これはまずタクシー運転手さんに対する言葉遣いの問題です。

タクシー運転手は概ね乗客より年齢が上の人が多いわけですが、その年長者である運転手さんに対してため口を使う。

「一番早い道で行って」「そこ右」「いくら?」など切りがないくらいの不適切な言葉遣いがありますが、この辺まではカスハラとまでは言えないのかもしれません。

しかし、これが

「おまえ」とか「おっさん」などの言葉に続くのであれば、これは明白なカスハラと言えるでしょう。

最近は女性のタクシー運転手さんもいるので「おばさん」や「ねえちゃん」などもカスハラと言えます。

乗客がタクシー乗務員に対して使うべき正しい呼称は「運転手さん」ですが、タクシー乗務員の方から「運転手さんと呼びなさい」とは言えない。

また、大阪など見ず知らずの人にも「おっちゃん」とか「おかあちゃん」とか「ねえちゃん」などが親しみを込めた言い方である地域もあるので、一概にカスハラとも言えません。

こういった言葉遣いに対する対処法はこれといったものがなく、運転手の対応次第であるとともに我慢強く耐えるしかないものです。

不当な料金値引き要求

頻度の高い料金の値引き要求を列記してそれぞれの対処法を述べます。

1.目的地に到着寸前や到着後に精算ボタンを押す前にワンメーター分の料金が加算された場合。

この場合、それを問題にすることなく料金を支払う乗客もいれば、「今料金上がりましたね」と問題視する乗客もいます。

私の場合、問題視するお客さんには上る前の料金「◯◯円でいいですよ」と言って、余計なストレスを生まないようにしています。

私が勤務する福岡市の場合ワンメーター分の料金はたかだか80円なので。

2.経路の間違いや誤解がもとで料金の値引きを要求される場合。

これはケースバイケースの対処法となります。

明らかにタクシー乗務員が間違えた場合は相当する値引きを提案しお客様に了承をもらいます。

しかし、お客様が右折すべきところを左折と指示したり、曲がるべき交差点の指示を間違えたり、進入禁止の時間や道を指示して迂回せざるを得なかった場合は、料金値引きには応じません。

いずれにしろ、こういったトラブルを避ける為には発車前ならびに走行中における経路の確認を十分に行なうことです。

 3.無線室から配車依頼を受けて迎車時刻に遅れる場合。

予期せぬ渋滞や道路工事などでお客様が無線室に依頼した迎車時刻前に到着できないことがあります。

この場合、1番大事なことは渋滞状況や道路工事状況を無線室に連絡し、迎車時刻に間に合わない可能性があることを無線室からお客様に伝えてもらうことです。

私の場合はこの対処法で今まで大きな問題にはなりませんでした。

ただ、それでもなおお客様がタクシー料金の値引きを要求される時は、これもケースバイケースの対応となるでしょう。

タクシー乗務員のあなたが許容できる範囲の値引き料金であれば値引きに応じるのもよしですが、タクシー会社は差額を補填してくれることはありません。

しかし、お客様と迎車時刻を打ち合わせしたのはタクシー会社の無線室。

乗務員であるあなたには何らの責任もないので、納得いかないのであれば値引きに応じないのも自由です。

経路選択に関する攻撃的な批判

タクシー運転手が遭遇するカスハラの一つに、経路選択に関する攻撃的な批判があります。

乗客はしばしば、運転手が選んだ経路に対して不満を持ち、暴言を吐いたり、威圧的な態度を取ることがあります。

例えば、「遠回りしている」と決めつけたり、「もっと早い道を使え」と強要することが一般的です。

このような批判に対しては、冷静に対応することが重要です。具体的には、以下の対処法が有効です。

丁寧な説明:発車する前におおまかな経路をお客様と確認し、納得してもらう。

地図やナビの活用:ナビゲーションシステムを使って「〇〇の交差点を右折でいいですか?」などと経路を確認しながら走行する。

柔軟な対応:「もし慣れてらっしゃる道があればいつでも仰ってください」と選択肢をお客様に預けその経路に従う。

これらの方法を用いることで、乗客とのトラブルを未然に防ぐことができます。

参考記事:タクシー乗務で起こりがちなトラブルに繋がるミスと回避法を現役運転手が伝授。

酔っ払い客による嫌がらせや迷惑行為

酔っぱらい客のカスハラは頻度も高くタクシー乗務員への迷惑度も高いものです。

中でも、行き先を明瞭に言えない乗客、適当な行き先を告げたまま寝てしまう乗客は困ったものです。

また、道路運送法第十三条で「一般旅客自動車運送事業者に該当するタクシーは、運送の引受けを拒絶してはならない」と定められています。

ただ、同法によれば、泥酔者や不潔な服装をしており車内が汚されると判断される場合は乗車を拒否できます。

従って、遠目で明らかに酔客だとわかる場合は余計なトラブルを抱え込まないように、「予約車」の札を表示して通り過ぎることが最も現実的な対処法となります。

タクシーの予約車札

私は昼勤務の運転手ですが、このやり方で何度も酔っぱらいの乗車を回避しています。

しかし、タクシーに手を挙げた人は普通の人でも、実際に乗ってくる客が泥酔者である場合があります。

乗り込む前に「泥酔されてると乗せられませんが」と断って対処できる場合もあれば、泥酔者が完全に乗り込んでしまい降りてくれないこともあります。

そこで目的地の住所を正確に告げて寝てしまう場合はそのままナビを使って業務できますが、何度も聞き直しても正確な住所を伝えてくれず寝てしまう乗客の場合はどうするか?

これは、残念ながら、最寄りの交番に直行して警察官のお世話になることです。

事情を説明すれば警察官は理解してくれるでしょうし、タクシー内には証拠となるドライブレコーダーが設置されています。

タクシー内のドライブレコーダー

無理な要求(危険な運転や法律違反を強要するなど)

現在はタクシー内にドライブレコーダーが設置されていることは知れ渡っているので、乗客からの無理な要求は減ってきていると聞いています。

ただ、それでも以下のようなタクシー乗務員への無理な要求はたびたび報告されています。

1.とにかく、急いで行くことを強要し運転手の運転が遅いと非難する。

2.進入してはいけない時間帯の道や一方通行の道を逆走することを強要する。

3.定員以上の乗客数の乗車を強要する。

これらに対しては、明確な説明と拒否ならびに法律違反や危険行為であることを丁寧に説明し、きっぱりと断る勇気を持ちましょう。
例:「申し訳ありませんが、それは法律違反になるため、お断りします。」

また、状況があまりに悪化する場合は、今の話はドライブレコーダーに記録されており、警察や会社の管理者に連絡する準備があることを伝えましょう。

車内での喫煙や飲食、ゴミ捨てなどのマナー違反

私の経験では車内で喫煙する乗客はいませんでしたが、タクシー乗務員に一言も言わずに車内で飲食する乗客は何人もいました。

そんな時は「なるだけシートなどを汚さないようにお願いしますね」とこちらから声を掛けています。

乗客がゴミを車内に捨てる場合は乗務員には知られないように隅に捨てるので、これは後で発覚した時にタクシー乗務員が処理する以外にありません。

まとめ

この記事は、タクシー運転手が遭遇する主なカスタマーハラスメント(カスハラ)の種類とその対処法について、現役乗務員の視点からまとめたものです。主な内容は以下の通りです:

1)乱暴な言葉遣いや暴言。

対処法:我慢強く対応し、地域性も考慮する。

2)不当な料金値引き要求。

対処法:状況に応じて柔軟に対応し、必要に応じて値引きを提案。

3)経路選択に関する攻撃的な批判。

対処法:丁寧な説明、ナビの活用、柔軟な対応。

4)酔っ払い客による嫌がらせや迷惑行為。

対処法:可能な場合は乗車拒否、困難な場合は警察の協力を求める。

5)無理な要求(危険な運転や法律違反の強要。)

対処法:明確に説明して断る、必要に応じて警察や管理者への連絡を示唆。

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