タクシー運転手はまずはタクシー会社に雇われてスタートしますが、多くのタクシー運転手はその後個人タクシーの資格を取得することを目指しています。
さて、個人タクシーは独立自営業者なのですべての業務責任は自分で負わなければなりません。
しかし、同時に独立自営業者としての自由や収入面での大きなメリットがあるのも事実。
この記事では現役の法人タクシー乗務員である私から見た個人タクシーの生活と人生設計についてお話しをします。
タクシー運転手を目指す人の参考になれば幸いです。
個人タクシーの資格に必要な要件のまとめ
法人タクシー運転手の経験がなくても、個人タクシー運転者講習を受講し、無事故無違反期間と各種の書類審査、試験に合格すれば、確かに個人タクシーの資格は取得できます。
とはいえ、実車での経験が乏しく、つまり営業地域の道路や目的地などの地理に不慣れで、お客さんへの対応やマナーなどに慣れていないとトラブルが多くなるものです。
従って、まずは法人で(つまり、タクシー会社から雇われて)タクシー業務の経験を積みその後個人タクシーになるというのが現実です。
この記事では法人タクシー運転手の経験を経て個人タクシー運転手になる道筋に限定してお話しします。
個人タクシー資格取得に必要な条件とは?
個人タクシー開業の申請を行うのは65歳未満でなければなりません。また、年齢別に満たすべき条件が異なります。
【35歳未満】
・タクシー会社に10年以上の運転経験があること。
・10年間無事故無違反であること。
【35歳から40歳未満】
・タクシーかハイヤーの運転業務に5年以上勤務しており、なおかつ3年以上継続して働いていること。
・あるいは、個人タクシー開業を申請する営業エリアで自動車運転業務を10年以上経験していること。この場合、バスやタクシーなどの旅客自動車以外の運転業務は実際の運転期間の半分で計算される。
・3年間以上無事故無違反であること。
【40歳から65歳未満】
・3年以内に2年以上のタクシーかハイヤーの運転業務をしていること。
・あるいは、25年以内に自動車運転業務を10年以上勤めた経験があること。この場合、バスやタクシーなどの旅客自動車以外の運転業務は実際の運転期間の半分で計算される。
・最低5年以上の無事故無違反であること。
個人タクシー開業に必要な資金の種別と目安は?
個人タクシーの開業資金に関する法的な決まりはありません。
しかし、一般的に次のような資金が必要であると考えられています。
【設備資金】
概ね70〜80万円以上必要ですが、それ以下で設備が整えられる場合は適用除外となります。
【運転資金】
こちらも概ね70〜80万円くらいが必要ですが、現実的には生活が安定するまでに必要な資金には個人差があります。
【保険料】
・自賠責保険料(20万円ほど)プラス任意保険あるいは共済保険に掛かる年間保険料。
これらを考え合わせると、個人タクシー開業に当初に必要な資金は200万円くらいが目安となります。
個人タクシーと法人タクシーの違いを表で理解する
ここで個人タクシーと法人タクシーの違いを表で理解しましょう。個人タクシーのメリットは黒字太字、デメリットは赤字太字にします。
項目 | 個人タクシー | 法人タクシー |
---|---|---|
事業主体 | 個人事業主 | 法人経営 |
雇用形態 | 自営業 | 雇用ドライバー |
収入形態 | 売上の総額 | 給与制 |
勤務時間 | 自由裁量 | 会社が決定 |
責任範囲 | 全て個人負担 | 会社が負担 |
車両 | 自前所有が一般的 | 会社所有車両 |
許認可 | 個人事業許可が必要 | 会社で取得済み |
自由度 | 高い | 低い |
リスク | 大きい | 小さい |
このように、個人タクシーは自営業者として完全な自由裁量が効きますが、リスクも大きくなります。
個人タクシー運転手になることで実現できる人生設計
個人タクシーをすることで可能となる人生設計について述べます。
運収の総額が日銭として入る
仮に、法人タクシーでの歩合が60%だったとすると、例えば一日の運収(売上額)¥30,000の場合¥18,000が翌月の給料日に加算されて支給されます。
しかし、あなたが晴れて個人タクシーの開業にこぎつけたとします。すると、その日の運収はすべて日銭として財布に入ることになります。
つまり、常に一定の現金が手元にあり、特に急な出費が必要となる時はとても大きなメリットとなります。
確実に貯金を増やせる
個人タクシーを開業すればすでに法人タクシー運転手として生活をしていた人には約40%増しの収入が手に入ることになります。
もちろん、これから諸経費(車両費、修理費、燃料費、タイヤ交換費、 保険料、 駐車場代 、 車検費用 など)を自分で支払う必要があります。
それにしても、40%増しの収入は大きい。
仕事を怠らず無駄遣いさえしなければ、貯金が確実に増えると言えます。つまり、これは人生設計の大きな柱になります。
私が勤めるタクシー会社にいる井上君の例
私が勤めるタクシー会社に井上君という29歳の青年がいます。
ある日「前職は何だったの?」と訊ねると、なんと答えは「学生です。」
井上君は学卒のままタクシー運転手になった珍しい例ですが、目標は個人タクシー運転手になることだとか。
C勤(夜勤務)の彼は毎月だいたい¥1,000,000の運収を揚げます。
参考記事:タクシー運転手の勤務形態について現役タクシー乗務員が解説
自分の取り分は約60%なので、諸経費を引かれても毎月¥500,000超の手取り収入があります。29歳の青年で毎月¥500,000超の手取り収入がある仕事はあまりないでしょう。
個人タクシーの資格を取るためにはこれから4~5年は無事故無違反で順調に仕事をする必要がありますが、井上君の冷静な仕事ぶりをみると個人タクシー開業は時間の問題でしょう。
彼が個人タクシー運転手の生活を始めたら、今のペースでいけば毎月¥1,000,000の収入があることになります。
これから生活費と仕事の諸経費を引いたとしても、最低でも毎月¥400,000内外の貯金が可能と推察できます。
彼氏曰く「個人タクシーになったら家を建てます」とのこと。夢に溢れた話です。
時間の拘束がなく融通が利くライフスタイル
法人タクシー運転手の仕事は勤務時間に会社の決りがあるので時間の融通が利かないという生活になります。
この点、個人タクシーは自営業なのでその日の勤務時間、あるいはいつ休みを取るかなどをすべて自分の裁量で決定できます。
例えば、
・体調や天候に合わせて勤務時間を調整できる。
・子供の行事(入学式、卒業式、運動会、発表会など)に合わせた休日の調整ができる。
・家族の都合に休日を合わせられる。
・親の介護の時間を自由に作れる。
・旅行などの時に自由に連日休暇を取れる。
このように個人タクシーの業務を順調にこなせば、極めて自由度の高い生活を送ることができます。
自由に副業ができる
独立自営業者である個人タクシーの運転手は副業をすることも自由です。
どこかに出かけたり雇われたりする副業は向いていませんが、インターネット上での副業ならパソコン一台で自由に挑戦できます。
例えば、
・地域ナビ、グルメ情報、旅行記などタクシー運転手ならではの経験を生かしたブログ。
・Googleアドセンスに挑戦。(現在の私の例)
・タクシー運転手の経験を生かしたYouTubeなどのメディア運営。
・webライティングを請け負う。
・個人的なスキル(語学や資格)を生かしたウェブ上での指導。
まとめ
【個人タクシーの資格取得条件】
- 65歳未満であること
- 年齢層により異なる運転経験年数と無事故無違反期間が条件
【個人タクシー開業に必要な資金】
- 設備資金:70〜80万円以上(例外あり)
- 運転資金:70〜80万円以上
- 保険料:自賠責+任意保険/共済の年間分
- 合計で約200万円程度が目安
【個人タクシーのメリット】
- 収入は売上の総額が入る
- 確実な貯金の増加が可能
- 時間の自由裁量が効く
- 副業がしやすい
【個人タクシーのデメリット】
- すべての責任が個人負担
- リスクが大きい
【具体的な人生設計のイメージ】
- 確実な貯蓄から家建てや事業展開も夢ではない
- 家庭生活との両立が容易
- 高収入が期待できる一方、経費管理が重要
- 副業でさらなる収入源の確保も可能