こんにちは。70歳、現役タクシー運転手歴7年のヤヌスです。今日も福岡の街で、さまざまな車の「走り出し」を見ながらハンドルを握っています。不思議に思われるかもしれませんが、私たちプロが警戒するのは「古そうな車」ではありません。むしろ――車検を通したばかりの車ほど、距離を取りたくなる瞬間があります。理由は単純です。車検や定期点検を受けたことで、ドライバーの意識が「安心側」に寄りすぎ、日常の注意力が一段落ちてしまうことがあるからです。今回は、タクシー運転手が本能的に距離を取る「日常点検不足の前兆運転」について、法律論ではなく、現場の感覚からお話しします。
- なぜ車検直後の車ほど、プロの目に「危ない空気」が映るのか
- 日常点検を怠るドライバー特有の「探り運転」の正体
- 発進の“間(ま)”や停止の甘さに見える、事故の予兆
- プロが教える、相手の「次の動き」を読み取る判断基準
- 日常点検が「運転の余裕」に直結する本当の理由
事故は「点検不足」より先に「運転の違和感」から始まる
事故は、車が壊れた瞬間に起きるわけではありません。そのずっと前から、ドライバーの操作に混じる「違和感」として表れています。
日常点検をしていないドライバーは、ブレーキの踏み応え、アクセルの重さ、タイヤの接地感といった微妙な変化を把握していません。
結果として運転は常に「探り」になります。プロは、その探り運転を数秒で察知します。
プロが警戒する「日常点検をしていない車」の前兆行動
私たちが「この車、近づきたくないな」と感じるのは、操作そのものよりも、操作に入るまでの“間(ま)”に違和感がある時です。
発進が一定でなく、ぎこちない
アクセル操作が下手なのではありません。踏むまでの間が毎回違うのです。
自分の車の状態を把握していないため、「今日はどれくらい踏めば動くのか」を走りながら探っています。プロはその不安定さを即座に感じ取ります。
停止線でピタッと止まれない
ブレーキ性能そのものより、止まるまでの予測が甘いことが問題です。
点検不足のドライバーは、ブレーキの効き具合を体で覚えていないため、減速の組み立てが遅れがちになります。
灯火類の汚れや暗さに無頓着
これは整備の問題ではなく、「自分がどう見られているか」を考えていないサインです。
プロはここで「周囲への意識が薄い運転」と判断します。
比較表|点検している車・していない車の決定的な違い
| プロの視点 | 点検している車 | 点検不足の車 | プロの対応 |
|---|---|---|---|
| 発進 | 意図が読める | 次の動きが読めない | 距離を取る |
| 減速 | 早めに予測できる | ブレーキが遅れる | 後ろにつかない |
| 車間 | 自然に一定 | 近づいたり離れたりする | 先に行かせる |
| 全体印象 | 余裕が伝わる | 常に探り運転 | 関わらない |
これは運転の上手い・下手の話ではありません。
「その車の次の動きが読めるかどうか」――それが、プロの判断基準です。
一般ドライバーにもお勧めの「運転が変わる日常点検」
ここまで読んで、「結局、何を点検すればいいのか?」と思われたかもしれません。
ですが、プロの視点で言うと、日常点検はチェック項目の数ではありません。
運転前に、自分と車の感覚を揃える行為です。
走り出す前に「今日はどうだ?」と車に聞く
エンジンをかけた瞬間の音、ブレーキを軽く踏んだ時の感触、ハンドルを切った時の重さ。
それが昨日と同じかどうかを、数秒感じてみてください。
異常を探す必要はありません。昨日との違いに気づければ十分です。
目で見る点検は「測る」より「感じる」
タイヤの空気圧を数値で測らなくても構いません。
「なんとなく潰れて見えないか」「左右で雰囲気が違わないか」を見るだけでいいのです。
ランプ類も同じです。点くかどうかより、暗く感じないかを意識してください。
日常点検の本当の効果は「運転者が落ち着くこと」
日常点検をすると、多くの人は無意識に運転が丁寧になります。
それは、車を確認したことで、自分が運転する責任を思い出すからです。
だからプロは、点検していない車より、点検している車の方が「動きが読める」と感じるのです。
まとめ|車検は通過点、日常点検は防衛線
日常点検は、単なる整備作業ではありません。
自分の命を預ける道具と向き合い、今日の状態を把握するための“儀式”です。
車検を受けたばかりだからと安心せず、走り出す前の数分間、車と会話をしてみてください。
そのわずかな余裕が、あなた自身だけでなく、周囲の車を事故から遠ざける最大の防衛策になります。

