こんにちは、福岡市の老舗法人タクシーで嘱託乗務員を務める現役ドライバーのヤヌスです。
どれだけ安全運転を心がけていても、タクシードライバーにとって「事故」は常に隣り合わせのリスクです。事故を起こしてしまうと、「行政処分(免許点数)」や「会社からのペナルティ」、そして最も重要な「お客様の安全」に関わります。
この記事では、現役ドライバーの視点から、タクシー特有の「起こしやすい事故パターン5つ」とその「予防策」を解説します。さらに、万が一事故を起こしてしまった場合の「初動」から「保険適用、示談、そして行政処分」に至るまでの「プロの処理手順」を、漏れなくお話しします。
このリスク管理の知識を身につけ、安心して乗務に臨んでください。
・ お客様の乗降時に起きやすい「ドア当て事故」の具体的な防止策
・ 事故発生時の「人命救護」から「警察・会社への連絡」までの初動手順
・ 会社加入の保険(対人・対物賠償)の適用範囲と自己負担(免責)の確認方法
・ 事故がキャリアに与える影響:「行政処分」(点数)と会社からのペナルティ
・ 示談交渉は絶対に自分で行わず、保険会社に任せるべき理由
1. タクシードライバーが特に起こしやすい「5つの事故パターン」
タクシーの事故は、お客様の乗り降りや、特有の急な進路変更によって発生しやすい傾向があります。
パターン1:お客様の乗降時の「ドア当て事故」
最も頻繁に発生し、ドライバーが責任を問われやすいのが、お客様が降車時に後方のバイクや自転車にドアをぶつけてしまう事故です。
- 原因: 後方確認不足と降車場所の選定ミス(路肩への幅寄せ不足)。
- 予防策: 降車時に必ず「後ろからバイクが来ていませんか」と一声かけ、必ずお客様よりも先にミラーと目視で安全確認をしてください。
パターン2:急な進路変更による「追突事故」
お客様の指示や、流し営業中の急な付け待ち(付け待ち場所への停車)のために、急ハンドルや急ブレーキを踏むことで、後続車から追突されます。
- 原因: お客様の要求と、付け待ちへの焦りによる無理な車線変更。
- 予防策: 進路変更は3秒前(約30m手前)からウインカーを出し、後続車との意思疎通を明確に行ってください。
パターン3:ターミナル付近の「右直事故」
駅や病院のロータリー、大通りの交差点で、右折待ちのタクシーが直進車と衝突する事故です。
- 原因: 「行けるだろう」という気の緩みや、信号の変わり目での無理な右折。
- 予防策: 対向車の速度を正確に見極めること。右折時は必ず「対向車の直進が完全に途切れるまで」待つという鉄則を守ること。
パターン4:車線変更を伴う「左折巻き込み事故」
タクシーレーンから一般車線へ戻る際や、急な左折でお客様を拾おうとした際に、左後方の自転車や歩行者、二輪車を巻き込む事故。
- 原因: 左後方(サイドミラーの死角)の確認不足。
- 予防策: 左折時は、サイドミラーに加え、窓を開けて耳で音を確認する、または目視でドアミラー下の死角を徹底的に確認すること。
パターン5:深夜の疲労による「単独事故・自損事故」
長時間勤務や深夜帯に乗務を続けることで、注意力や判断力が低下し、電柱や縁石に接触する事故。
- 原因: 睡眠不足と疲労の蓄積。
- 予防策: 疲れを感じたらすぐに休憩を取ること。特に深夜は、「稼ぎたい気持ち」よりも「安全」を最優先にしてください。
2. 事故発生時の「初動と保険適用」の全手順
事故が発生した際、ドライバーの「初動」がその後の保険処理や示談交渉を大きく左右します。
手順1:人命救護と警察・会社への連絡
何よりも「人命救護」が最優先です。
- 最優先事項: 負傷者の救護(救急車の手配)。
- 連絡: 警察(110番)と会社への連絡を真っ先に行う。会社へは、「事故の場所、時間、負傷者の有無」を正確に伝えること。
- 相手の情報: 相手の氏名、連絡先、車のナンバー、加入保険会社を確実に聞き取る。
手順2:保険会社への通知と適用範囲の確認
事故報告後、会社から保険会社へ連絡がいきますが、自身の加入している任意保険(※個人加入の場合)も確認してください。
- 会社加入の保険: タクシー会社が加入している自動車保険(対人・対物賠償)が適用されます。
- 免責金額(自己負担額): 会社との契約に基づき、修理費用の一部を自己負担(免責)するケースがあるため、会社の規定を確認してください。
手順3:示談交渉は必ず会社・保険会社に任せる
事故相手との示談交渉は、絶対にご自身で行ってはいけません。
- 鉄則: 示談交渉はすべて保険会社に任せる。現場で安易に「全責任を認めます」といった発言は絶対に避けてください。
3. 事故がキャリアに与える影響:「行政処分」と「会社規定」
事故を起こした場合、売上だけでなく、免許の点数や給与にも影響が出ます。
3-1. 事故による「行政処分」(点数)と免許への影響
人身事故を起こすと、「基礎点数」と「付加点数」が加算されます。
- 基礎点数: 事故の責任割合に応じて加算される点数。
- 付加点数: 怪我の程度(全治日数)に応じて加算される点数。
- 免許への影響: 違反点数の累積により、免許停止(免停)や免許取り消しのリスクが発生します。特にタクシーはプロドライバーのため、基準が厳しくなることがあります。
3-2. 会社から課されるペナルティと評価
多くのタクシー会社では、事故発生に対し独自の規定を設けています。
- ペナルティ: 事故報告書の提出、始末書の提出、一定期間の給与減額、または研修への参加などが一般的です。
- プロの視点: 事故後の報告の速さや対応の誠実さが、会社からの評価やその後のキャリアに大きく影響します。隠蔽しようとせず、正直に報告することが最善です。
🚨 まとめ:リスク管理こそプロの証
タクシードライバーの仕事は、安全管理がそのまま売上とキャリアに直結します。
今回解説した5つの事故パターンを常に頭に入れ、予防を徹底すること。そして、万が一の際には人命救護と正確な初動を冷静に行うこと。
このリスク管理の知識は、あなたのプロドライバーとしての価値を必ず高めます。