EV車との事故で「車両保険」は破綻する?現役プロが指摘する『バッテリー交換費用と全損リスク』の盲点

EV車との事故で車両保険は破綻する 事故と保険

こんにちは、現役タクシードライバー歴7年のヤヌスです。

最近、私の営業エリアでもEV(電気自動車)やハイブリッド車(HV)が急速に増えてきました。静かで加速もスムーズ、環境にも優しい…まさに次世代のクルマです。

​しかし、私たちプロのドライバーは、このEV・HVの普及とともに、ある深刻な「保険の盲点」に気づき始めています。それは、「EV車との事故が、従来の車両保険の常識を覆すほどの高額修理費と全損リスクをはらんでいる」ということです。

​この記事では、EV車特有の高額修理リスクの背景、万が一EV車と事故を起こした場合の過失割合の争い、そしてあなたの車両保険が「EV時代」に対応できているかを見直すための必須特約について、現場の視点から解説します。

この記事でわかること:

  • EV車事故で修理費が「200万円超」になる理由
  • 従来の車両保険ではカバーできない「バッテリー交換」の盲点
  • EV車との過失割合争いが複雑化する背景
  • あなたの車両保険を「EV対応」にするための必須特約
  • タクシー運転手が実践するEV車との事故を避ける運転術

​EV車事故で「修理費200万円超」はなぜ起こる?バッテリー交換が引き起こす全損リスク

​EV車は環境性能が高い一方で、その中核部品である高電圧バッテリーが、事故時の修理費用を従来のガソリン車とは比較にならないほど高騰させる原因となっています。

​リチウムイオンバッテリーの構造的弱点と高コスト

​EV車のリチウムイオンバッテリーパックは、車体の床下に広範囲に配置されています。衝突などによりこのバッテリーケースにわずかな衝撃や変形があった場合でも、内部のセル(電池)の安全性を確保するため、バッテリーパック全体の交換が必須となるケースが非常に多いです。

交換費用: バッテリーパックの交換費用は、車種にもよりますが100万円から300万円以上にも達します。これは、一般的なガソリン車のエンジン交換費用を大きく上回る金額です。

技術と設備: バッテリー交換には専門的な技術と高電圧を扱うための特殊な設備が必要なため、修理できる工場も限られ、費用がさらに高くなる傾向があります。

​フレーム損傷=即、全損と判断される背景

​従来の車両保険では、修理費用が車の時価額を上回ると「全損」と判断されます。EV車の場合、軽微なフレームの歪みやバッテリー周辺の損傷であっても、バッテリーパックの交換が必要となり、結果として修理費用が車の時価額をすぐに超えてしまう事態が多発しています。

修理の困難性: バッテリーの安全性を完全に担保できないと判断された場合、保険会社やメーカーは修理を推奨せず、全損扱いにする傾向が強まります。これが、新車でもすぐに全損判定されてしまう背景です。

​衝突事故でEV車と当たった場合の「過失割合」の争い

​もしあなたがEV車と衝突事故を起こした場合、従来のガソリン車との事故よりも、過失割合の交渉が難航する可能性があります。

​相手が高額修理になると、交渉が長期化する理由

​相手がEV車の場合、修理費用が非常に高額になるため、相手側の保険会社は「なんとか過失割合を下げたい」と強く主張してくることが予想されます。

交渉の長期化: 従来の事故ではスムーズに進んでいた交渉も、EV車特有の高額修理費が絡むことで、示談までにかかる時間が大幅に長くなる可能性があります。

訴訟リスク: 最悪の場合、高額な賠償をめぐって訴訟に発展するリスクも考慮しなければなりません。

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​あなたの車両保険を「EV時代」に対応させる必須特約

​EV車との事故リスクが高まる現代において、あなたの車両保険が時代に対応しているか、今一度見直す必要があります。

​車両全損時の特約(代車費用、新価特約)の重要性

​EV車は全損と判断されやすい特性があるため、万が一の全損時に備える特約が非常に重要です。

​代車費用特約: 全損で車が使えなくなった場合、修理期間(または新車購入期間)中の代車費用を補償してくれます。EV車の修理や納車には時間がかかるため、この特約は必須です。

新価特約(車両新価保険特約): 新車購入から一定期間内(例:5年以内)に事故で全損になった場合、購入時の金額で新車を買い直せる特約です。EV車は高価であるため、この特約がなければ、全損時に十分な補償が得られない可能性があります。

弁護士特約: 高額なEV車の修理費が絡む過失割合の交渉は、専門家を交えて行うのが賢明です。自己負担なく弁護士に交渉を任せられる弁護士特約は、あなたの精神的・経済的負担を大きく軽減します。

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​プロが教える:EV車との事故を避けるための運転術

​私たちタクシー運転手は、日々様々なEV車とすれ違います。その特性を理解することで、事故リスクを減らすことができます。

​タクシードライバーがEV車の特性から学ぶ防御運転

​EV車や高出力のハイブリッド車は、ガソリン車に比べて急加速しやすく、また走行音が非常に静かという特性があります。

加速性能への警戒: 信号が変わった瞬間の急発進や、高速道路での追い越し時に予想以上の加速をするEV車には、常に余裕を持った車間距離を保ちましょう。

静音性への配慮: 歩行者や自転車は、EV車の接近に気づきにくいことがあります。特に駐車場や住宅街などでは、周囲の音に注意を払い、EV車の存在を常に意識して運転しましょう。

​まとめ:EV時代の事故リスクに「賢い保険」で備えよう

​EV車の普及は、地球環境にとって素晴らしいことですが、それに伴う新たな事故リスク、特に高額なバッテリー交換費用と全損判定の可能性は、従来の車両保険の常識を変えつつあります。

​現役タクシードライバーとして、私は常に最新の自動車トレンドと保険の知識を更新し、乗客の命と自分の資産を守っています。この記事をきっかけに、あなたの車両保険が「EV時代」に対応できているかを確認し、賢い備えを始めていただければ幸いです。

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