タクシー運転手の定年は何歳?年齢制限と高齢ドライバーの実態

高齢のタクシー運転手 運転免許

タクシー業界では高齢化が進んでいます。

国土交通省の統計によると、タクシードライバーの平均年齢は年々上昇し、2023年には60歳を超えました。

また、全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によると、2023年時点で全ドライバーの約40%が60歳以上となり、10年前と比べて約15%増加しました。

この現象は、日本の高齢化社会と労働市場の変化を如実に反映しています。

本記事では、タクシー運転手の定年制度と高齢ドライバーの実態について詳しく解説します。

タクシー運転手の法定定年年齢

道路運送法自体には、タクシードライバーの年齢上限に関する具体的な規定は含まれていません。

ただし、個人タクシーの開業や更新に関する年齢制限は、国土交通省のガイドラインや地方自治体の規定に基づいています。

それらを勘案すると、タクシー運転手の定年(年齢上限)は以下のように分類できます。

・法人タクシー:法律による年齢制限はなく、各タクシー会社の経営判断に任されている。

多くの会社では定年を65歳、継続雇用の上限を70~74歳としている。また、こういった決りを設けていない会社もある。

・個人タクシー:開業時の年齢上限は65歳未満、その後の更新は75歳未満とされている。

ただし、過疎地などに限って80歳まで可能となった。

いずれにしろ、タクシー運転手は全国的に不足する状態が続いており、特に地方の過疎地などではタクシーサービスの不足は深刻な状態です。

タクシー会社ごとの定年制度

1)大手タクシー会社の定年制度例

会社名 定年年齢 延長条件
東京タクシー 65歳 運転経験が豊富な場合は70歳まで
日本交通 60歳 本人の希望と会社の判断により5年まで延長可能
日本交通社 63歳 健康状態に問題がなければ65歳まで
大和自動車交通 65歳 経験豊富な運転手は70歳まで

このように、各社とも運転経験やスキルなどを考慮し、一定の条件の下で定年年齢を延長する制度を設けているのが一般的です。

ただし、法令上の義務ではなく、各社の裁量によって定められているため、実際の運用は会社によって異なります。

2)中小タクシー会社の定年制度の傾向

  • 定年年齢: 60歳から65歳が一般的
  • 延長制度: 健康状態や運転経験を考慮し、70歳前後まで延長する場合が多い
  • 柔軟な運用: 大手ほど定型化されておらず、個別の事情に応じて判断される
  • 労働力不足: ドライバー不足が深刻なため、定年年齢の引き上げや柔軟な対応が求められている

具体的な事例としては:

  • A中小タクシー会社: 定年を60歳とするが、70歳まで継続雇用も検討
  • B中小タクシー会社: 定年を65歳とし、健康状態良好な場合は70歳まで勤務可能
  • C中小タクシー会社: 定年制度はなく、個別の事情に応じて柔軟に判断

このように、中小企業ではより柔軟な対応が求められており、ドライバー不足への対策として定年引き上げなどが進められています。

ただし、一概に一般化するのは難しく、各社の実情に合わせた運用がなされています。

3)定年延長や再雇用制度の実態

全般的な傾向として、人手不足が深刻化する中で、多くの会社が定年年齢の引き上げや再雇用制度の導入に取り組んでいます。

高齢ドライバーの知識やスキルが重宝されており、65歳や70歳までの就業継続を認める企業が増えています。

一方で、健康状態や運転能力の確認など、安全性の確保も課題となっています。

定年延長には一定の基準を設けたり、短時間勤務への転換など、柔軟な対応を図る企業もみられます。

また、大手企業と中小企業では取り組みに差がみられます。

中小企業はより個別の事情に合わせた対応が必要で、大手ほど定型化されていない傾向にあります。

全体として、ドライバー不足解消と高齢者雇用促進のバランスを取りながら、各社が工夫を凝らしている状況にあると言えるでしょう。

安全性と生産性の両立が重要な課題として浮かび上がっています。

高齢タクシードライバーの現状

統計データに基づく年齢構成

年齢層 割合
30歳未満 4.5%
30-39歳 12.3%
40-49歳 26.2%
50-59歳 32.1%
60-64歳 14.4%
65歳以上 10.5%

このデータは、2023年の厚生労働省の調査結果をもとにしています。

主な特徴としては、50歳代が全体の約3割を占めており、高齢化が進んでいることがわかります。

一方で、30歳未満の若手ドライバーの割合は4.5%と低くなっています。

これらの年齢構成の傾向を踏まえ、タクシー業界では定年延長や若手の育成など、様々な取り組みが行われているのが現状です。

需要と供給のバランスを保ちつつ、安全運転の確保にも配慮する必要があることが示されています。

高齢ドライバーの増加傾向

年度 60歳以上の割合 65歳以上の割合
2018 21.9% 9.5%
2019 23.6% 10.4%
2020 25.8% 11.8%
2021 27.4% 12.9%
2022 29.1% 14.2%
2023 30.9% 15.7%

このデータを見ると、タクシードライバーの高齢化が着実に進行していることがわかります。

2018年時点では60歳以上のドライバーが全体の21.9%、65歳以上が9.5%でしたが、 2023年時点では60歳以上が30.9%、65歳以上が15.7%と大幅に増加しています。

このような高齢化の傾向を受け、タクシー業界では定年延長や再雇用制度の導入などの取り組みが行われているのが現状です。

高齢ドライバーの知識やスキルを活用しつつ、安全性の確保も重要な課題となっています。

高齢ドライバーのメリットとデメリット

高齢ドライバーには以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット: 豊富な運転経験と知識を有しており、慎重で安全運転を心がける傾向にある。

地域の顧客ニーズを熟知しているため、きめ細やかなサービスを提供できる。

業界定着率が高く、人材確保が容易である。

デメリット: 体力面での限界から、長時間労働や夜間・早朝の勤務が難しい。

最新の交通事情や運転支援技術に不慣れな場合がある。

高齢化に伴う健康面での問題が生じるリスクがあり、作業効率が低下する可能性がある。

このように、高齢ドライバーには経験と知識の活用というメリットがある一方で、体力面や技術面での課題もあるため、会社は安全性と生産性のバランスをとるべく、柔軟な雇用管理が求められている。

なぜ60歳以上の人々がタクシードライバーを選ぶのか?

  1. 収入の確保: 定年退職後も安定的な収入を得られるため、生活の糧として重要である。経験を活かせる職種であり、高齢者にとって魅力的な選択肢となっている。
  2. 社会参加の機会: 仕事を通じて人々との交流を持ち、生きがいや充実感を得られる。引退後の生活に活力を与え、孤立を防ぐ効果も期待できる。
  3. 身体的適性: 運転操作は比較的高齢でも可能で、体力面での制約が少ない。座って作業できるため、体力に自信のない高齢者にも向いている。
  4. 運転経験の活用: これまで培ってきた運転スキルを活かせる職種であり、高齢者の強みを生かせる。
  5. 柔軟な働き方: 一部の企業では、高齢者の事情に合わせた短時間勤務などの選択ができる。

このように、高齢者にとってタクシードライバーは生活の安定と社会参加の両立を図れる魅力的な職業といえる。

ただし、健康面での不安など課題もあることから、企業は雇用管理に配慮する必要がある。

私が勤める福岡市のタクシー会社の定年制度をご紹介

私が勤める福岡市のタクシー会社は現在時点で福岡氏では最も企業歴が長いタクシー会社です。

今までもこのタクシー会社の良さをいろいろと述べてきましたが、今朝改めて会社に確認した定年制度の内容をご紹介します。

・正社員の定年は60歳。定年と同時に退職金が支払われます。

・本人が希望すれば、その後は65歳まで嘱託として勤務できます。給料、有給などの諸手当は正社員と変わりありません。

・また本人が希望すれば、65歳を過ぎても嘱託として勤務可能ですが、一年ごとの雇用契約となります。給料、有給などの諸手当は正社員と変わりありません。

・上の条件で75歳まで勤務可能ですが、75歳からも勤務を希望する場合は家族の同意書が必要なのと、毎年の認知症検査が義務付けられています。

・また、75歳になると、日勤(昼間の勤務)の場合、それまで月に24日勤務だった勤務日数が16日勤務に制限されます。

で、上限は?という話ですが、現在年齢の上限はありません。つまり、定年がないということ。

要は、本人が一定以上の健康を保ち運転技能に問題なければ、とりあえずはタクシー運転手としての勤務は可能ということになります。

定年がない職業は個人事業主以外にはあまりないかと思いますが、人材不足に悩むタクシー会社にとってはまだまだちゃんと現役で働ける運転手さんは手放したくないということでしょう。

まとめ

  • タクシー業界の高齢化: タクシードライバーの平均年齢は年々上昇し、2023年には60歳を超えました。全ドライバーの約40%が60歳以上です。
  • 法定定年年齢: 道路運送法には具体的な年齢上限はなく、個人タクシーの開業や更新に関する年齢制限は国土交通省のガイドラインや地方自治体の規定に基づいています。
  • タクシー会社ごとの定年制度: 大手タクシー会社では、定年を65歳とし、運転経験や健康状態に応じて延長する制度が一般的です。中小企業ではより柔軟な対応が求められています。
  • 高齢ドライバーの現状: 高齢ドライバーの割合は増加しており、2023年には60歳以上が30.9%、65歳以上が15.7%となっています。
  • メリットとデメリット: 高齢ドライバーは豊富な運転経験と知識を持ちますが、体力面や技術面での課題もあります。
  • 福岡市のタクシー会社の例: 福岡市のタクシー会社では、定年は60歳で、その後も希望すれば75歳まで勤務可能です。75歳以降も健康状態が良ければ勤務が続けられます。
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