こんにちは。70歳、今日も元気に福岡の街を走り続けている現役タクシードライバー歴7年のヤヌスです。
「雪がほとんど降らない地域だから、冬の運転はそれほど気にしていない」
そう思っているドライバーさんは意外と多いのではないでしょうか。
しかし、73万kmの現場を走ってきた私の実感では、冬場は雪が降らない都市部こそ、事故や車両トラブルの火種が転がっています。
原因は、凍結路面そのものではなく、冬の寒さが車に与える影響を知らないことによる「油断」や「誤った対処」です。
今回は、一般的な注意喚起だけでは語られない現役タクシー運転手の視点から、雪の少ない地域でこそ命取りになる「冬のNG行為」と、プロが実践する防衛策について解説します。
- 雪なし地域ほど陥りやすい「冬のNG行為」の正体
- 熱湯解氷が招く「夜間視界の歪み」というプロの懸念
- エンジン暖機不足が「右直事故」を招くメカニズム
- 「空タン(燃料不足)」が精神的な余裕を削る理由
- プロが冬の朝、一番最初に確認している“車の表情”
雪が降らない地域でも冬の事故が増える理由
冬の朝、冷え切った車内や凍った窓に焦りを感じたことはありませんか?その「焦り」こそが最大の敵です。
冬はオイルが硬くなり、バッテリーは弱り、タイヤのゴムも硬くなります。車が本来の性能を発揮するまでに時間がかかる季節なのです。この「車の本調子」と「ドライバーの急ぎ」のズレが、事故の前兆となって路上に現れます。
現役タクシー運転手が見てきた「冬のNG運転習慣」
1. 熱湯でフロントガラスを融かす行為の危険性
手っ取り早く氷を融かしたい気持ちはわかりますが、熱湯は厳禁です。ガラスが割れるリスクはもちろんですが、プロが本当に恐れるのは「微細な歪み」です。急激な温度変化でガラス表面に歪みが生じると、夜間走行時に街灯や対向車のライトが乱反射し、歩行者の見落としに繋がります。
2. エンジン始動直後の急加速・高回転
オイルが十分に回っていない状態での急加速は、エンジンの寿命を縮めるだけでなく、アクセルへの「反応の遅れ」を招きます。交差点で右折する際など、「行ける!」と思った瞬間に加速がついてこない。このコンマ数秒のズレが右直事故を引き起こします。
3. 頻繁な短距離運転の繰り返し
寒いからと近所のコンビニまで車を出す。こうした短距離走行は、エンジン内部に水分を溜め、オイルの劣化を早めます。これはブレーキのタッチやエンジンのレスポンスを悪くし、プロが嫌う「探り運転」の原因になります。
雪が降らない地域でこそ重要な「冬の基本点検」
「点検」と聞くと、ボンネットを開けて何かを測るような作業を想像するかもしれませんが、私たち現場のドライバーが冬に重視しているのは、もっとシンプルな確認です。
それは「今日は昨日と同じ車か?」を感じ取ること。冬の寒さは、車の弱っている部分を一気に表に出します。
フロントガラスとワイパーの動き
デフロスターを入れたときの曇りの取れ方、ワイパーを動かしたときの引っかかり。ここで違和感があれば、夜間や雨天時の視界トラブルに直結します。
エンジン始動直後の音と振動
セルの回り方が重くないか、アイドリングが不安定でないか。冬は小さな異音が、そのまま大きなトラブルの前兆になる季節です。
ブレーキを踏んだ瞬間の「初期の効き」
走り出して最初の信号で、いつもより踏み代が深く感じないか。この「最初の一踏み」で感じる違いが、急制動時の判断ミスを防いでくれます。
これらは特別な工具も知識も要りません。「走り出す前と、走り出して最初の5分」で確認できる、冬の都市部ドライバーにとって最も現実的な点検です。
プロが冬に特に意識しているポイント
私たちプロは、冬の朝こそ「走り出し10分」を贅沢に使います。
車が温まるまでは、ブレーキの効きもエンジンの反応も“昨日とは違う”という前提で走ります。この「違和感」を走り出しに確認しておくことで、いざという時の判断ミスを防いでいるのです。事故は操作ミスで起きるのではなく、こうした「準備不足」から始まります。
事故の前兆運転という考え方については、現役タクシー運転手の視点でこちらの記事で詳しく解説しています。→ タクシー運転手が本能的に警戒する「事故の前兆運転」|違反になる前に起きていること
| ① 発進がぎこちない |
|---|
| 冬のNG運転: アクセルの踏み始めが毎回バラつく |
| 背景にある原因: エンジン・オイルが冷えた状態を把握していない |
| 基本点検(おすすめ): 走り出し直後にアクセルの遊びと踏み応えを確認する |
| ② 停止線でピタッと止まれない |
| 冬のNG運転: 減速の組み立てが甘く、じわっと止まる |
| 背景にある原因: ブレーキ初期制動の変化を意識していない |
| 基本点検(おすすめ): 最初の信号で踏み代と効き具合を確認する |
| ③ 車間距離が安定しない |
| 冬のNG運転: 近づいたり離れたりを繰り返す |
| 背景にある原因: タイヤの接地感・空気圧低下への意識不足 |
| 基本点検(おすすめ): 走行初期に路面との「転がり感」を意識する |
| ④ 夜間の視認性が悪い |
| 冬のNG運転: 灯火類の汚れや暗さを放置する |
| 背景にある原因: 「見えているつもり」で周囲からの見え方を意識していない |
| 基本点検(おすすめ): 出発前に灯火類の点灯確認とレンズ清掃を行う |
まとめ|雪が降らなくても、冬の運転は別物
冬の運転は「走り方」以上に「車の扱い方」が問われます。
熱湯を使わずデフロスターで視界を確保する。エンジンを労わってゆっくり走り出す。燃料を多めに保って心に余裕を持つ。こうした小さな習慣が、あなたを事故から守る最強の保険になります。
特別な技術は必要ありません。「今日は昨日と同じ車か?」と問いかけるだけで、冬の事故リスクは確実に下げられます。

