こんにちは、現役ドライバー歴7年、70歳のヤヌスです。
各地でクマによる人身被害が過去最悪レベルで相次ぐ中、これまで指摘してきた「法的な壁」に、ついに国が踏み込みました。警察庁は10月30日、警察官が人の生活圏でライフル銃を使用してクマを駆除できるようにする方向で検討していると明らかにしました。
この記事は、この緊急方針が、「自衛隊はなぜ熊を撃てないのか?」という法的なジレンマや、深刻なハンター不足といった現場の構造的課題を、どこまで解決できるのかを分析します。そして、私たちドライバーが知っておくべき、市街地でのライフル銃運用に伴う新たなリスクと課題を解説します。
この記事でわかること(警察ライフル対応の要点):
- ・警察官によるライフル駆除の法的根拠となる、国家公安委員会規則の見直しとは。
- ・駆除現場の高齢化と人員不足を、警察の機動隊員がどう補うのか。
- ・市街地でのライフル銃運用が抱える「誤射・跳弾」といった深刻な運用上の課題。
1. 「自衛隊の壁」と「ハンター不足」の空白地帯
これまでのクマ駆除の現場では、「誰が撃つのか」という責任の所在が曖昧なため、緊急対応が遅れるという構造的な課題がありました。
1-1. ライフル対応の法的根拠:規則の見直し
これまでの国家公安委員会規則では、警察官によるライフル銃(特殊銃)の使用目的として、クマの駆除は含まれていませんでした。今回の対策は、この規則を緊急で見直すことで、警察官が駆除に踏み込むための法的根拠を整備しようとする動きです。
- 狙い:威力のあるライフル銃を使うことで、クマを即座に無力化し、人身被害の拡大を防ぐことが目的です。散弾銃よりも高い「即止め力」が期待されます。
1-2. 駆除の担い手不足をどう埋めるか
従来のクマ駆除は、高齢化が進み、人数が激減した猟友会のハンターに依存していました。警察の対応方針は、この深刻な担い手不足を埋めることを意図しています。
- 想定される人員:実際にライフル駆除にあたるのは、都道府県警の機動隊員らが想定されています。彼らは銃器の取り扱い技術を持ち、組織的な行動が可能です。
- 猟友会からの歓迎:高齢のハンターからは、体力的に危険な現場から解放され、安全性が高まると歓迎の声が上がっています。
2. 新たに発生する「運用上の課題」とドライバーのリスク
警察がライフルを扱うことによるメリットは大きいですが、市街地での運用には、私たち住民やドライバーも知っておくべき極めて危険な課題が伴います。
2-1. 最大の懸念:市街地での「誤射・跳弾」リスク
ライフル弾は、散弾銃よりも射程距離が格段に長く、貫通力が高いという特性があります。
- 安全性の確保:市街地の住宅密集地や道路脇でライフルを使用する場合、弾が逸れたり、跳弾(地面や硬いものに当たって跳ね返る現象)が発生したりすると、遠方の人や車に重大な被害を及ぼす可能性があります。
- 「安土(バックストップ)」の確保:ライフル弾は、安土(安全に受け止められる場所)に向けて撃つことが原則です。住宅地でこの安全性をどう確保するかが、現場の警察官にとって最大の課題となります。
2-2. 現場での「判断の遅れ」は解消されるか
クマが市街地に出没した場合、「誰が、いつ、撃つか」という最終的な判断は、引き続き自治体(市町村)が担います。
- 責任の所在:警察官が駆除にあたっても、自治体が法的責任を恐れて許可を出し渋るという構造は残る可能性があります。迅速な「判断」が下されなければ、「自衛隊の壁」が「警察の壁」に置き換わるだけになってしまいます。
「熊駆除の責任構造」
┌───────────────
│ 自衛隊:法律上「射殺できない」 │
│ 警察:法改正により「対応可能へ」 │
│ ハンター:高齢化・人手不足 │
└───────────────
⇒ 空白地帯を埋める新体制が始動
3. ドライバーが知っておくべき「緊急時の行動」
警察がライフルを構えるような緊迫した現場に遭遇した場合、私たちドライバーの行動が、事故の有無を分けます。
3-1. 警察の指示への「絶対的な従順」
警察官が銃器を構える現場では、「危険が切迫している」状況です。
- 停車と車内待機:警察官が現場にいる場合、指示があるまで絶対に車外に出ないでください。車は最後のシェルターです。
- 静かな行動:警察官の指示には静かに従い、クラクションを鳴らすなどクマや警察官を刺激する行動は絶対に避けてください。
3-2. 現場の「混乱」に巻き込まれないためのリスク回避
- 現場への接近の回避:テレビやネットで情報を見て、興味本位で現場に近づくことは極めて危険です。これは、警察の活動を妨げるだけでなく、誤射や跳弾のリスクに身を晒す行為です。
💰 まとめ:「撃てる体制」と「撃つ判断」のジレンマ
警察官によるライフル駆除の方針は、クマ対策の「火力不足」と「人員不足」という現場の空白地帯を埋める大きな一歩です。
しかし、「自衛隊はなぜ撃てないのか」という法的なジレンマに続き、次は「市街地で誰が、いつ、どこに撃つか」という運用上の、そして責任上のジレンマが、行政に突きつけられています。
私たちドライバーは、国が対策に動いたことを歓迎しつつも、現場でのライフル使用に伴う二次的なリスクを理解し、警察の指示に冷静に従う危機管理意識が求められます。
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