こんにちは、現役ドライバー歴7年、70歳のヤヌスです。
連日のクマ被害報道を受け、「自衛のために自分で罠を仕掛けたい」「市町村はもっと積極的に罠を設置すべきではないか」という声が高まっています。しかし、私たち一般の住民や、自治体がクマ対策を進める上には、「自衛隊法」とはまた別の、極めて高い「法的な壁」が存在します。
それが、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」に基づく、有害鳥獣捕獲許可の厳格な規制です。
この記事では、なぜクマ対策としての罠の設置や捕獲が難しいのか、法的な規制の基準と、私たち住民や市町村が直面する申請手続きの煩雑さを解説します。私たちの命を守る自衛の行動が、なぜ法律によって阻まれてしまうのかを理解し、今後のクマ対策を考える参考にしてください。
この記事でわかること(罠設置の法的規制の要点):
- ・クマを捕獲するための「鳥獣保護管理法」が定める厳しい規制とは何か。
- ・個人がクマ対策の罠を仕掛けることが、事実上不可能に近い理由。
- ・市町村や専門家による対策さえも遅らせる申請手続きの「煩雑さ」と、その解決策。
1. クマ捕獲の基本ルール:「鳥獣保護管理法」の壁
日本国内の鳥獣(クマを含む)は、すべて「鳥獣保護管理法」によって厳重に守られています。この法律が、個人のクマ対策を難しくしている根本原因です。
1-1. 原則「捕獲禁止」と例外の「有害鳥獣捕獲許可」
鳥獣保護管理法では、野生鳥獣の捕獲や殺傷は原則として禁止されています。クマを捕獲するための罠を設置する行為も、この禁止対象に含まれます。
- 特例の適用:例外的に、農業・林業に被害が出ている、または人命に関わる危険がある場合に限り、「有害鳥獣捕獲許可」を得て捕獲が可能になります。
- 許可の主体:この許可申請は、原則として市町村(または都道府県)が行うか、または狩猟免許を持つ個人が申請します。一般住民が「怖いから」という理由だけで罠を仕掛けることは、絶対にできません。
1-2. 許可を得るための「厳格な要件」
単にクマが出たというだけでは許可は下りません。許可を得るためには、捕獲目的の正当性や、捕獲後の安全管理など、非常に厳格な要件を満たす必要があります。
- 技術的要件:罠の設置場所や方法が、他の動物や人間を傷つけない適切なものであること、罠の管理能力があることが求められます。
- 狩猟免許の必要性:銃器や罠でクマを捕獲するには、狩猟免許(わな猟免許)が必要です。一般人が免許を持たずに設置することは違法行為となります。
2. クマ対策の「行政の壁」:申請手続きの煩雑さ
狩猟免許を持つ専門家や市町村でさえも、捕獲許可の申請手続きが煩雑で時間がかかるため、緊急時の迅速な対応が難しくなっています。
2-1. 許可申請の「時間的ロス」
クマが人里に出没し、緊急性が高まったとしても、罠の設置には以下の時間的ロスが発生します。
- 申請書類の作成:「被害状況の証拠」「捕獲方法」「捕獲後の処理計画」など、詳細な書類の作成に時間を要します。
- 行政の審査期間:申請後、すぐに許可が下りるわけではなく、行政の内部審査に数日〜数週間かかることもあり、「今すぐ」の対策が取れません。
2-2. 市町村の「人員・財政的な負担」
捕獲許可の主体である市町村側も、クマ対策で疲弊しています。
- 専門家の不足:捕獲作業や申請手続きに対応できる専門知識を持った職員や、現場で実際に罠を設置・管理できる熟練したハンター(捕獲従事者)が不足しています。
- 費用負担:罠の購入費用、捕獲後のクマの運搬・処分費用など、すべて行政の予算から賄う必要があり、財政的な負担も重い課題です。
【クマ対策の法的構造】
───────────────┐
│ 鳥獣保護管理法(環境省) │
│ ├ 捕獲・殺傷は原則禁止 │
│ └ 例外:有害鳥獣捕獲許可(市町村・都道府県が申請) │
│ ↓ │
│ 狩猟免許保持者・専門業者のみが設置可能 │
└───────────────
3. ドライバーが取るべき「自衛の現実的な行動」
法的な壁が存在する以上、私たち一般の人間は、「捕獲」以外の現実的な自衛手段を徹底するしかありません。
3-1. 遭遇リスクを減らすための情報収集
- 地域情報の確認:走行するエリアのクマ出没情報や、ツキノワグマの生息域情報を事前に確認し、リスクの高い時間帯(早朝や夕方)の走行を意識的に避ける。
- 車両の防衛強化:窓を完全に閉め、車内からクマを誘引する食べ物の臭いを完全に排除し、車を「安全なシェルター」として機能させる。
3-2. 法的規制を理解した上での「政治的な行動」
- 法改正への提言:「自衛隊法」と同様に、「鳥獣保護管理法」についても、緊急時における捕獲許可の迅速化や、自治体への財政支援を求める声を、積極的に行政や政治に届けることが重要です。
💰 まとめ:「法的な壁」の理解こそが最善の危機管理
クマ対策の現場には、「自衛隊法」と「鳥獣保護管理法」という、二重の「法的な壁」が存在し、迅速な対応を阻んでいます。
私たちドライバーは、「自分で罠を仕掛けることはできない」という法律の現実を理解し、その上で「遭遇しないための最善の備え」と「車内での生命を守るための行動」を徹底することが、最も合理的かつ唯一の自衛手段となります。
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