こんにちは、現役タクシードライバー歴7年、70歳のヤヌスです。私たちプロのドライバーにとって、深夜の運転で襲いかかる**「眠気」**は、飲酒運転に匹敵する最も危険な敵です。
しかし、その眠気の原因が睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの病気にある場合、事故を起こした際の保険の対応は普通の居眠り事故とは一線を画します。最悪の場合、保険が支払われず、あなたの経済的な未来が破綻するリスクすらあるのです。
この記事では、現役ドライバーの視点と、実際に現場で起きた事例を元に、SASが原因の事故で車両保険の『重過失』認定を受けるリスクと、あなた自身と家族を守るための保険戦略を解説します。
この記事でわかること:
- 居眠り事故が「重過失」認定されるリスクとSASの関係
- 保険会社が補償を拒否する条件と約款の免責事由
- 現場で起きたSAS事故とキャリア・車種変更の実例
- SASと事故に備えるための保険特約と防御戦略
- 治療継続が「重過失回避」に直結する理由と実務対策
🚗 居眠り事故は「普通の事故」ではない:SASが絡む重過失リスク
多くのドライバーは「居眠り事故は過失事故として保険が利く」と考えています。実際、対人・対物賠償保険は被害者救済の観点から支払われることが多いです。しかし、車両保険や自分への補償は別です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が引き起こす事故の深刻度
SASは、睡眠中に何度も呼吸が止まり、十分な質の高い睡眠が取れない病気です。この結果、日中に強い眠気が襲い、重大な居眠り事故につながることが指摘されています。
過去には、JR新幹線オーバーラン事故や関越道ツアーバス事故など、SASが関与した重大な居眠り事故が社会問題となりました。裁判では、SASと診断されていても**「眠気を自覚しながら運転を継続した過失」**が重く評価され、有罪となる事例が多数報告されています。
⚠️ 保険会社が車両保険を拒否する「重過失」の境界線
保険約款には、「運転者の重大な過失」が認められた場合、車両保険や人身傷害保険といった自分への補償が支払われない可能性があるという「免責事由」が定められています。
特にSASが事故原因となった場合、以下の条件が加わると「重過失」と認定されるリスクが高まります。
診断後の治療怠慢: 医師からSASと診断され、運転を避けるように指導を受けていたにもかかわらず、治療を怠って運転を継続していた場合。
明らかな過労状態: 事故前に長時間運転をしていた、または直前に強い眠気を自覚していた事実がドライブレコーダーなどで確認された場合。
【プロの警告】SASが原因で「キャリアと車種」が変わった現場の現実
私が勤めるタクシー会社でも、睡眠時無呼吸症候群を持つ同僚が夜間運転で数度事故を起こした事例があります。その結果、彼には下の二つの変更が下されました。
勤務変更: 会社は彼を昼勤務に異動させられました。
車種変更: 事故を起こしても**修理費が比較的安価な車種(旧型コンフォートなど)**に乗務を切り替えられました。
これは、プロの現場がSASによる事故を**「通常の過失では済まされない高リスク」として扱っている何よりの証拠です。会社側が、高額な修理費(車両保険)のリスクを避けるために防御策を講じたことと、運転者の健康管理がキャリアに直結する**ことを示しています。
🛡️ SASと事故に備えるための「保険の防御戦略」
SASのリスクを認識した上で、保険とキャリアを守るためには、戦略的な特約の活用が不可欠です。
1. 衝突相手が居眠り運転だった場合の「過失割合」
もしあなたが居眠り運転で事故を引き起こした場合、加害者であるあなたは通常より重い過失(2割ほど加算)を負う傾向があります。しかし、相手の保険会社との高額な賠償交渉を有利に進めるため、あなたは弁護士特約が不可欠です。
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2. 自分を守るための「車両全損時の特約」
SASの疑いがある、あるいは長時間の運転が多い方は、自分の車を守るために以下の特約を必ず見直してください。
新価特約(車両新価保険特約): 全損時に新車購入費用が支払われます。高額な修理費で全損になりやすい現代の車(EV車など)には必須です。
代車費用特約: 事故による車の修理や、全損時の新車納車期間(長期化しやすい)の間も、費用を気にせず生活を維持できます。
3. SASと診断された後の「自己防衛の第一歩」
最も重要なのは、**「治療を継続する」ことです。SASは適切な治療(CPAP療法など)で症状が劇的に改善される病気であり、治療継続は「保険会社に重過失と認定させないための最重要防御策」**にもなります。
💡 まとめ:居眠りリスクはプロの目で判断を
居眠り事故は、あなたの保険等級を3等級ダウンさせ、長期的な保険料負担を増加させます。しかし、SASが絡んだ場合は、それ以上の**「車両保険の全額支払い拒否」**という最悪の事態を引き起こしかねません。
いびきや強い眠気を感じたら、まず専門医に相談してください。
そして、自分の保険がこの「プロも恐れるリスク」に対応できているか、すぐに確認してください。
あなたの安全と経済的安定を守るための行動は、今すぐ始められます。