こんにちは、現役ドライバー歴7年、70歳のヤヌスです。
連日報道されるクマ被害の拡大は、単なる「クマの増加」という自然現象として片付けられるべきではありません。長年ヒグマを撮影し続ける専門家は、被害拡大の原因を「行政による出没抑止対策の不足」と断言し、被害拡大を招いた「人災」の側面を指摘しています。
特に、行政が多額の予算を投じている「ヘア・トラップ調査」が、皮肉にもクマを人間のエリアにおびき寄せ、危険性を増しているという指摘は深刻です。
この記事では、クマ被害の背景にある行政の無策と、予算配分の構造的欠陥に、危機管理の視点から切り込みます。
この記事でわかること(ヘア・トラップ人災説と行政の無策):
- ・クマ被害が防げない根本原因である「危機管理の時間差」の正体。
- ・交通インフラデータが「命を守る情報」として活用されない構造的な壁。
- ・モビリティを「地域の安全を支える基盤」として再定義する新しい戦略。
- ・高齢化する猟友会に代わる、ドローンと小型EVを活用した新しい運用体制。
1. なぜクマ被害は「人災」と断言されるのか?
クマ被害は突発的な事故ではなく、行政の対策の遅れによって拡大しています。
1-1. 繰り返される事故と町の規制の怠慢
大学生が死亡し、消防隊員が襲われた北海道松前郡福島町では、前年の事件を登山者に周知せず、登山規制も講じていませんでした。さらに、新聞配達員が死亡する事故の前日にも出没情報がありながら、町はゴミ出し規制を実施しなかったという事例は、対策の怠慢以外の何物でもありません。
1-2. クマの賢さと「人のエリア」認識
専門家は、クマは音などで人間の存在を知らせれば立ち去る、賢い動物だと指摘します。しかし、規制を怠ることで、クマは「人目につかない早朝なら生ゴミを食べられる」「このエリアは安全だ」と学習し、市街地を自分の行動圏と認識してしまうのです。
2. 予算の9割が調査に消える「ヘア・トラップ」の危機
被害抑止策に予算が回らず、調査・研究ばかりに偏重している実態が、被害拡大の大きな要因です。
2-1. 驚愕の予算比率と対策費の不足
北海道のある時期のヒグマ関連予算は、約2000万円のうち1640万円(約9割)が調査・研究費用となっています。その中で、「ヘア・トラップ調査」に約1100万円もの大金が使われている一方で、電気柵や防護柵といった具体的な抑止対策への予算は不十分です。
2-2. 「クマを林道におびき寄せる」調査方法の矛盾
クマの体毛からDNAを採取するヘア・トラップ調査は、クマが好むにおい(クレオソート)を塗布し、クマを誘引する手法です。しかも設置場所が、登山者や山菜採りをする人も通る林道からわずか10mほどの場所。これは、クマに「林道周辺はクマのエリアだ」と教え込むようなものであり、行政が自ら危険を招いていると批判されています。
3. 現場知見が示す「駆除」以外の有効な対策
現場でクマと共存を試みる農家の方々の知見は、行政の対策の方向性の誤りを指摘しています。
3-1. 重要なのは「初期対応」と「共存」の境界線
農家の人々は、初めて見る個体には「おーい!」と声を出し、鈴や爆竹で「ここは人の縄張りだ」と認識させる「初期対応」を徹底しています。電気柵を設置すれば、畑に悪さはしない個体も多く、不必要な駆除は避けるべきだと訴えます。
3-2. 駆除が招く「負の連鎖」
駆除によってそのエリアにクマがいなくなると、かえって新しいクマが侵入し、それが人を恐れない個体であった場合、被害が拡大するという負の連鎖も発生しています。
関連記事:【クマの次は行政か?】『緊急銃猟』はなぜ機能しないのか?人命を置き去りにした『あいまいなルール』の代償
💰 まとめ:今必要なのは「調査」ではなく「防衛」の予算配分
クマ被害の拡大は、「具体的な安全対策」よりも「調査」に予算を偏重させる行政の構造的欠陥が招いた人災の側面が強いと言えます。
真の危機管理とは、頭数把握ではなく、電気柵補助金、林道の藪刈りによる緩衝帯整備、厳格なゴミ出し規制といった、クマを人里に近づけないための「防衛インフラ」に予算を集中させることです。今こそ、行政は人命最優先の予算配分に見直すべきです。
関連性の高いリスク管理記事
クマ問題の構造的欠陥と「移動のリスク管理」に関する、以下の記事もぜひ合わせてご確認ください。
