こんにちは、ヤヌスです。
2025年11月6日、複数の報道で“熊撃退スプレーの偽物が出回っている”ことが問題視されました。
クマによる人身被害の深刻化が、ついに「命を守る最終手段」にまで影響を及ぼしています。品薄状態が続くクマ撃退スプレーをめぐり、性能に問題がある「ニセモノ(多くは中国製)」が市場に出回っていることが明らかになりました。
本来、クマ対策は行政が担うべきものですが、その行政が無策だったため、市民は「自己防衛」を迫られています。しかし、この自己防衛の手段ですら、安価な偽物が横行しているという事態は、日本の危機管理における「リスクに対するコスト意識」の低さを、市民と行政の両面から浮き彫りにしています。
本記事では、この悪質な偽物スプレー問題の裏側にある、「命のコスト」をケチろうとする構造的な欠陥を徹底的に批判します。
この記事でわかること(偽物スプレー問題の構造):
- ・ニセモノの横行を許した、製品の輸入規制・検疫に関する行政の構造的放置。
- ・「安価な中国製」を選び、命のコストをケチろうとした消費者のリスク管理意識の甘さ。
- ・偽物問題から見える、安全に関わる製品の「品質」に対する社会全体のコスト意識の欠如。
1. 命を守る最終手段を脅かす「ニセモノ」の構造
偽物スプレーが野放しになるという事態は、日本の製品安全管理体制における深刻な欠陥を示しています。
1-1. 輸入規制・検疫をすり抜ける「悪質な放置構造」
今回問題になっている偽物スプレーの多くが海外製(主に中国製)であると指摘されています。防犯用品や護身用品は、その性質上、厳格な輸入規制と品質検査が必須です。しかし、品薄という非常事態に乗じ、輸入代行や個人輸入を通じて、有効成分の含有量や噴射性能が不明確な製品が国内に流入しています。
行政は、この種の緊急性の高い防犯製品について、ECサイトやフリマサイトでの販売規制を強化し、検疫を厳格化する義務を怠っています。この「放置構造」が、偽物を流通させる温床となっているのです。
1-2. 「安価」に飛びつく消費者のコスト意識の甘さ
偽物スプレーは、正規品の品薄と価格高騰を背景に、「安ければいい」という消費者の心理につけこんでいます。クマとの遭遇時に生死を分ける「命の最終防衛ライン」において、数千円の差で性能が劣る製品を選ぶことは、リスクに対するコスト(支出)をケチっていることに他なりません。
行政の無策に怒る一方で、自分の安全を担保するための製品選びにおいて、最も安易な「価格」という基準を選んでしまう消費者のリスク管理意識の甘さも、構造的な問題の一部です。
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2. 偽物問題が示す日本の「安全コスト」の軽視
この偽物スプレー問題は、クマ対策における行政と市民双方の「安全に対するコスト意識」の低さを象徴しています。
2-1. リスク回避に「継続的なコスト」を払わない行政の体質
クマ対策に必要なのは、偽物を取り締まる一時的な措置だけではありません。「消費者の自己防衛に頼らせるな」という根本的な批判が必要です。行政は、恒久的なガバメントハンター制度へのコストを避け、今回は偽物対策という「対症療法」に追われています。常に「問題が深刻化してから、最小限のコストで場を収めようとする」という、行政の構造的なコスト回避体質が、最終的に製品の安全性にまで影響を及ぼしているのです。
2-2. 「命の危険」に値札をつけることの是非
トウキョウジュウホウの大塚氏が指摘するように、「クマにあわないと使わない物なので、使うまでわからない」という、極めて悪質な行為です。しかし、この「使われないかもしれない」という性質が、消費者と行政双方に「とりあえず安いもので済ませておこう」という意識を生み出します。
私たちは、「自分の命の安全」という最も重要な価値に対し、正しいコストを支払い、正しい製品を選ぶという、極めてシンプルな行動を徹底する必要があります。
3. まとめ:自己防衛の手段は自分で守る意識を持て
偽物クマ撃退スプレーの横行は、クマ問題が「人命」に関わる緊急事態であるにもかかわらず、行政の輸入規制・販売規制の放置と、消費者のリスクに対するコスト意識の甘さが複合的に作用した結果です。
行政が規制を怠るなら、私たち自身が「自分の命を守る製品」の真贋を見極め、安易な安さに飛びつかない戦略的な消費者になる必要があります。
命の最終防衛ラインは、誰かに頼るのではなく、自分で守り抜くという意識こそが、この危機を乗り越える最大の教訓です。
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