こんにちは、現役ドライバー歴7年、70歳のヤヌスです。
私たちタクシードライバーは、お客様の安全を目的地までお送りする責任を負っています。その責任には、お客様が乗車中に急病や体調不良を訴えた際の「救護義務」も含まれます。対応を誤ると、お客様の命に関わるだけでなく、重過失責任を問われる法的リスクが生じます。
特に、意識不明や激しい痛みを訴えている場合、一刻を争う正しい判断が必要です。
この記事では、私の経験と法的な知識に基づき、乗客の急病時にドライバーが負う対応の義務、最優先で取るべき行動、そして最悪の事態を避けるために絶対にやってはいけない行動を、チェックリスト形式で徹底解説します。お客様の命と、ご自身のキャリアを守るための知識を身につけましょう。
この記事でわかること(急病対応の義務とリスク):
- 急病時における運転手の「法的救護義務」とは?
- 119番通報と会社への報告の優先順位
- 救護時に絶対にやってはいけない3つの行動
- 「病院直行」を求められた際の正しい判断基準
1. 運転手の「救護義務」と法的リスク
乗客が急病になった際、ドライバーは一般の市民以上の責任を負うことになります。
1-1. 運転手が負う「法的救護義務」
道路運送法や、タクシー会社の「旅客運送約款」には、運送中の旅客の安全確保と救護に関する規定が含まれています。
- 義務の内容:お客様が急病になった場合、速やかに運転を中止し、必要な救護措置を講じる義務があります。これには、119番通報、安全な場所への移動、会社の指示を仰ぐことが含まれます。
- 法的リスク:救護義務を怠った結果、お客様の容体が悪化したり、命に関わる事態になった場合、「重過失」とみなされ、民事上の損害賠償責任や、最悪の場合は業務上過失致死傷罪に問われるリスクがあります。
1-2. 判断基準:「救急車」か「病院直行」か
お客様から「〇〇病院まで急いで」と求められても、ドライバーの判断で119番を優先すべきケースがあります。
- 【119番優先】のケース:意識がない、激しい胸の痛み(心臓発作の可能性)、大量の出血、ろれつが回らない(脳卒中の可能性)。一刻を争う生命の危険がある場合は、救急車を呼び、救急隊員の指示に従うべきです。
- 【病院直行】のケース:明らかに軽度な吐き気、乗り物酔い、事前に持病を申告しているなど、意識がはっきりしており、ご本人が病院を強く希望している場合。
2. 急病発生直後の「プロの行動チェックリスト」
急病を発見した場合、以下の手順で冷静に対応します。
2-1. 命を守るための初動4ステップ
- 安全な場所への停車:直ちにハザードランプを点灯させ、お客様を驚かせないようゆっくりと安全な路肩に停車し、エンジンを切る。
- 容体の確認と119番:お客様の意識と呼吸を確認し、生命に危険があると判断したら迷わず119番へ通報する。
- 会社への報告:会社へ「お客様が急病で119番通報したこと、現在地、容体」を報告し、指示を仰ぐ。
- 救急隊員を誘導:安全な場所で待機し、救急隊が到着しやすいよう、誘導路などを確保する。
【重要】 119番通報時、「タクシー運転手で、現在地は〇〇です。お客様が急病です」と身分を伝えることで、後の警察・会社の処理がスムーズになります。
3. 救護時に「絶対にやってはいけない行動リスト」
良かれと思ってした行動が、かえって容体を悪化させたり、法的な問題を引き起こしたりすることがあります。
3-1. 救護で避けるべき行動3選
- 自己判断で薬を飲ませる:お客様が持参したものであっても、水以外のものを飲ませたり、薬を勧める行為は、医師法違反や容体悪化のリスクがあるため絶対に避ける。
- 無理に揺さぶる・移動させる:脊髄損傷の疑いがある場合や、激しい痛みを伴う場合は、むやみに体を動かさない。意識不明の場合は、気道を確保し、体を横向きにするなど、最低限の処置にとどめる。
- 勝手に私物を調べる:財布やバッグから保険証や連絡先を探す行為は、緊急時であってもプライバシー侵害にあたるため、原則として救急隊員や警察に任せる。
3-2. 泥酔客の場合の対応
急病か泥酔か判断がつかない場合は、「急病である」と仮定して対応するのがプロの判断です。
- 判断基準:呼びかけに反応しない、嘔吐を繰り返す、明らかに顔色が悪いなど、単なる泥酔以上の異変を感じたら、迷わず119番へ連絡します。
🚨 まとめ:迷ったら119番が正解
乗客の急病対応は、売上を度外視し、「人命救助」というドライバーの社会的責任を果たす行動です。
判断に迷うような状況であれば、迷わず119番に連絡し、プロの指示を仰ぐことが、お客様の命を守り、ご自身の法的リスクを回避する最善の方法です。日頃から救急箱やタオルなどの備品を清潔にしておくことも、プロの心得です。
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