こんにちは現役タクシードライバーの身ながら、世の中の様々な問題を取り上げるヤヌスです。
11月13日から秋田・岩手で始まる「警察官によるライフル銃でのクマ駆除運用」。このニュースは、人々の「なぜ今まで警察や自衛隊は動かなかったのか」という根深い疑問に一つの解答を与えようとしています。
しかし、単なる対応強化ではありません。今まで警察の「権限」と「装備」を阻んでいた法規制の壁を、政治的な緊急判断によって乗り越えたという点に、この運用の本質があります。本記事では、クマの駆除を巡る警察の権限の歴史的背景を分析し、今回の新運用を可能にした手続きと政治判断の全容を徹底解説します。
この記事でわかること(クマ駆除の政治・手続き):
- ・今まで警察がライフルでクマを撃てなかった「銃刀法」「鳥獣保護管理法」の壁。
- ・今回の「11/13開始」を可能にした、警察庁と環境省による特別措置の具体的な手続き。
- ・この緊急措置が、行政の「無策の放置」という構造的欠陥を一時的に隠蔽している側面。
- ・この「権限の壁」が示唆する、社会の危機管理における意思決定の遅さ。
1. 警察の権限を阻んでいた「クマは撃てない」歴史的背景
警察官は拳銃や特殊銃を所持していますが、人里に出たクマを即座に駆除する権限と装備は、今まで明確に整備されていませんでした。
1-1. 鳥獣保護管理法と警察の「駆除」権限
野生鳥獣の捕獲・駆除は、基本的に「鳥獣保護管理法」に基づき、環境省や都道府県の許可を得たハンター(猟友会)が行うのが原則です。警察官の権限は「人の生命・身体の保護」が主目的であり、「有害鳥獣の駆除」は専門外とされてきました。
1-2. 装備の壁:ライフル銃の運用の難しさ
警察官の装備する拳銃では、クマを確実に無力化するには不十分です。ライフル銃は所持しているものの、使用は立てこもり犯などの「対人」を想定した銃器対策部隊に限られていました。クマのような動く動物に対し、市街地でライフルを使用する手続き、訓練、リスク評価が未整備だったのです。
2. 11/13開始!「ライフル駆除」を可能にした政治判断と手続き
被害の甚大化を受け、警察庁と環境省は、異例のスピードでこの「権限の壁」を乗り越える手続きを進めました。
2-1. 警察庁による「緊急措置」の発動
今回の運用は、法改正を待たず、既存の法制度下での「緊急措置」として実施されます。警察庁が主体となり、銃器対策部隊の警察官を、鳥獣保護管理法の枠を超えて「駆除」に投入するという判断を下しました。
2-2. 運用を担保する具体的な手続きと連携
この運用は、警察単独で行われるわけではありません。
- 指揮命令: 駆除の最終判断は、地元の自治体(知事など)が行い、警察に要請するという手続きを踏む。
- 役割分担: 警察官は、ハンターが対応できない緊急かつ危険性の高い場面に限定して出動し、ライフルで駆除を担う。
この手続きは、「専門外の警察にリスクを押し付けつつ、形式的な行政の権限構造は維持する」という、苦肉の策と言えます。
3. 政治的判断の裏側に見える「無策の構造的欠陥」
この迅速な緊急措置は評価できる一方、問題がここまで深刻化するまで動けなかったという政治の「無策」を批判する必要があります。
3-1. 対症療法で「無策の放置」を隠蔽する構造
警察官の駆除強化は、ハンター不足の解消や、無計画な開発(メガソーラーなど)の規制強化といった根本対策を怠ってきた政治の責任を、一時的に覆い隠す役割を果たしています。これは、政治が「対症療法」で場を収めようとする構造的欠陥です。
3-2. 危機管理における「意思決定の遅さ」の教訓
人命に関わる危機に対し、法規制や組織の壁を乗り越える意思決定がこれほど遅れたという事実は、日本の危機管理体制の根深い課題を露呈しました。
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💰 まとめ:問題の本質は「意思決定の遅さと無策」にある
警察官によるライフル駆除は、長らく警察の権限を阻んできた壁を、政治的な緊急判断で一時的に突破した結果です。
事は人命に関わる今そこにある問題。これにすぐさま対応をできなかったことは大いに恥ずべきことではありますが、事ここに至って警察がライフルで熊を駆除する体制を整えられるようになったことは喜ばしいことですね。
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