こんにちは、現役ドライバー歴7年、70歳のヤヌスです。
少子高齢化が進む現代において、定年後も働き続けるのは当たり前の選択となりました。しかし、この「再雇用制度」は、一見、高齢者に優しい制度に見えながら、その実態は、多くのドライバーの生活を危機に晒す「構造的欠陥」を内包しています。
特に、タクシーや物流といったドライバー業界では、定年前と仕事内容は変わらないのに、給与が激減し、結果的に「働き損」になるという悲劇が日常的に起きています。
この記事では、70歳現役ドライバーである私の視点から、再雇用制度に潜む給与体系の裏側と、老後の「稼ぎ方」を守るための戦略的な選択肢について警告します。
この記事でわかること(再雇用制度の罠):
- ・定年後に基本給や賞与が激減する「構造的カラクリ」と、その法的根拠。
- ・働きすぎると年金がカットされる「年金カットの二重苦」の現実。
- ・モチベーション低下が招く「事故リスクの増大」という見過ごされがちな危機。
- ・給与が減る前に「高単価な移動」へ戦略的に転職する重要性。
1. 給与が激減する「再雇用制度」の構造的カラクリ
再雇用制度は、企業の「人件費削減」と「経験者確保」を両立させる仕組みとして利用されています。
1-1. 基本給激減のルール
多くの企業では、定年後に再雇用する際、給与体系を定年前とは別の新しい賃金規定に移行させます。仕事内容は同じでも、この新規定では「定年前の基本給の○割」といった形で基本給が激減します。これは法的には違法ではないことが多いため、ドライバー側は受け入れるしか選択肢がありません。
1-2. 成果主義への逃避と「賞与カット」の現実
再雇用後の給与体系は、基本給が低い分、歩合(成果)の比率が意図的に高く設定されがちです。さらに、安定収入の柱であった賞与(ボーナス)がカットされるケースも多く、結果的に不安定で「稼ぎ方」を自分で管理しなければならないリスクが増大します。
1-3. 「年金カット」と「社会保険料負担」の二重苦
再雇用後の給与と年金を受け取る場合、「在職老齢年金制度」により、一定額を超えると年金がカットされます。さらに、社会保険料の負担は高齢になっても重くのしかかり、給与激減と年金カット、社会保険料負担の「二重苦」により、ドライバーは「働き損」の構造に陥りやすくなります。
【コラム】再雇用で年金が減る?在職老齢年金制度とは
再雇用後の給与が低いにもかかわらず、年金もカットされる原因となるのが「在職老齢年金制度」です。
この制度は、厚生年金に加入しながら働く60歳以降(65歳未満、または65歳以上)の人を対象としており、「給与と年金月額の合計額が一定の基準額(2024年度は47万円)を超えた場合、年金の一部または全額が支給停止になる」という仕組みです。
つまり、老後の生活資金を確保しようと頑張って働いても、その「稼ぎ」が一定のラインを超えると、国から支給される年金が逆にカットされてしまいます。これは、給与が激減した上に「頑張って働いた罰」のように年金まで減らされる、高齢ドライバーにとって極めて厳しい構造的なリスクなのです。
2. 再雇用ドライバーが陥りやすい「危機管理」の罠
収入の激減は、単に生活水準を下げるだけでなく、安全運転というドライバーの根幹に関わる部分にも影響を及ぼします。
2-1. モチベーション低下による事故リスクの増大
給与が激減することで、「なぜこれだけ働いても報われないのか」という不満や、仕事への意欲が低下しやすくなります。特に高い集中力と安全意識が求められるタクシー・物流業界において、これは重大な事故リスクの増大に直結します。
2-2. 企業の「低賃金戦力」化という構造的な問題
企業側にとって、再雇用制度は「長年の経験を持つドライバーを、最低限のコストで確保し続ける」ための有効な手段です。高齢ドライバーが「経験者を安く使い続けるための仕組み」として利用されているという、構造的な問題を認識することが重要です。
3. 老後の「稼ぎ方」を守るための戦略的選択肢
老後の生活を守るためには、会社の制度に依存せず、自分の「移動の専門性」を最も高く評価してくれる市場へ主体的に移ることが危機管理です。
3-1. 再雇用を拒否し、「業務委託契約」へ移行する戦略
会社との雇用契約ではなく、個人事業主として業務委託契約を結ぶことで、会社と対等な立場で高歩合を交渉できる可能性があります。企業側の都合に縛られず、自分のペースで効率的に稼ぐという新しい選択肢です。
3-2. 60代で「高単価な移動」へ戦略的転職
再雇用で給与が激減する前に、給与体系が成果報酬ベースであり、定年後も高い歩合で稼ぎやすいタクシー会社へ、60歳時点で戦略的に転職する選択が重要です。特に、歩合給の比率が高い会社を選べば、定年という概念に関わらず、スキルに応じた収入を得やすくなります。
💰 まとめ:制度に頼らない「自分で作る老後の稼ぎ方」
定年後の再雇用制度は、一律に低賃金での再雇用を可能にする、**「高齢ドライバーを低賃金戦力として使い潰す」**という構造的欠陥を内包しています。
老後の稼ぎ方を守るためには、会社の制度に依存せず、ご自身の運転スキルという「移動の専門性」を最も高く評価してくれる市場へ、自ら戦略的に移るという主体的な危機管理の戦略が不可欠です。
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