(最終回)【燗酒のすすめ】
【燗酒のすすめ】
お弁当と日本酒を愛する皆さま、こんにちは。
赤城おろしが吹きすさぶ群馬県にも梅の花が咲き始め、いよいよ春の足音がもうすぐそこまで聞こえているようです。」
春のお酒といえば、桃の節句の白酒に、桜を眺めながらの花見酒。
ふんわりとしていて淡く優しいお酒のイメージですよね。
ちなみに、童謡「うれしいひなまつり」にも出てくる「白酒」とは、「甘酒」のことではないって知っていましたか?
甘酒・・・ご飯に米麹を混ぜて保温し、米に含まれるデンプンを糖化させたもの。アルコールは含みません。
白酒・・・蒸したもち米に味醂や米麹等を加えて仕込み1か月程度熟成させた後、すりつぶしたもの。
酒税法ではリキュール類に分類され、アルコールを含みます。
ということで、甘酒かと思って白酒をグイグイ飲んでしまうと、
赤いお顔の右大臣のようになってしまいますので気を付けましょう。(ま、それも楽しいですけどね。)
そして、ふんわり桃色のイメージからほど遠い私はといえば、
最近、日本酒好きの仲間二人と共にこんな会を開きました。
念のため言っておきますが、アルバイトを募集する会ではありませんよ。燗酒の会です。
幅広い温度帯で楽しめるのが日本酒の魅力の一つですが、酒本来の甘みや旨みがさらにふくらむのがお燗酒。
冷たい状態では現れきれていなかった風味が、温めることでグググと増すタイプのお酒を、
「燗映え」する酒、「燗上がり」する酒、と呼んだりもします。
体が温まるとか、悪酔いしずらいとか、血行が良くなるとか、
日本酒を温めて飲むことの効用については、
ネットでもたくさん出てきますのでこちらではあえて明記しませが、ご興味のある方はぜひ見てみてください。
私は効能云々よりも、温かくて美味しくてホッとするので燗酒が大好きです。
イベントでご協力いただいたのは、局地的ブームを巻き起こした“鴨中”の記事でもお世話になった、
群馬県桐生市にある隠れ家的お蕎麦屋さんの「みさき」さんです。
http://oh-bento-labo.com/menberblog/2015/12/16/123
群馬県でも筋金入りの酔っ払い・・・じゃなかった、
日本酒好きの三人が企画する「SAKEスリーピース」というイベントなので、
いつも「3」をテーマに内容を決めているのですが、
今回は、北海道・東北・関東の三つの地域から、お燗をして美味しいお酒を集めよう、ということになりました。
もう、どの地域もそれぞれ美味しいお酒があって迷っちゃう♪
ちなみに私が担当したのは、生まれ故郷である北海道のお酒。左端の三本です。
お料理は、「みさき」の大将が燗酒に合うようにと腕をふるってれました。
季節感を大切に、素材を無駄にせず、丁寧にひかれた出汁をベースに作られた、酒飲みのための特製つまみです。
自分で作るときにも参考にしたい味がたくさんあって、作り方や味付けを何度も聞いてしまいました。
そして今回、私がとても感動したのがこちらの柚餅子。(手前のスライス状のもの)
柚子をくりぬいて、三種類の味噌をベースに胡桃を加えた特製胡桃味噌を詰め、
それを蒸し、さらに1か月以上、寒ざらしにしてようやく出来上がるそうです。
柚子と味噌の香りが絶妙で、程よい塩味に後味はほろ苦く。
日本酒に合うのはもちろんなのですが、一口食べると何か元気になれるような気がする、
そんな不思議な底力のある食べ物だと思いました。
手間をかけた料理というのは、きっとそういう力があるのでしょう。
1年間お付き合いいただいた「かやの酔い撮れ手帖 別誂」も、今回が最終となりました。
この間にも、家で飲み、外で飲み、勉強し、講座を開き、イベントを企画し、
多くの友たちと酌み交わし、決して少なくない時間を日本酒とともに過ごしてきました。
その中で私が考えていたのは、日本酒というのは自分の心を豊かにしてくれ、
そして間違いなく人とのつながりをも深めてくれるものだということです。
ここ数年、特に若い世代の中で日本酒を飲む層が増えてきており、
様々なメディアでも取り上げられるようになりました。
先人たちが培ってきた叡智の結晶である日本酒が、一介のブームではなく、
この先も暮らしの酒として根付いていくことを切に願います。
1年間、こんな酔っ払いの拙い文を読んでいただき、ありがとうございました。
心より感謝を申し上げます。
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金 伽倻(キン・カヤ)
唎酒師/酒匠/日本酒学講師
群馬県在住
【日本酒に使われるお米のこと】
お弁当と日本酒を愛する皆さま、こんにちは。
1月に積もった雪もどんどん解けてしまい、駐車場にわずかに残っている雪を名残惜しんでいる、
雪が大好きな前橋在住のおかっぱチビことベンラボアンバサダー・ブロガー金カヤです。
いつも日本酒を飲みながら思うのですが、日本酒ってすごく贅沢なお酒ですよね。
米一粒に八十八の神様が宿ると言われるほど、貴重な主食を使ったお酒なのですから。
酒造りには一般的に、水稲粳玄米(主食用飯米)や、酒造好適米と呼ばれる醸造用玄米が用いられます。
酒造好適米は、①大粒であること、②心白があること(白色不透明部分)、③タンパク質・脂肪が少ないこと、
④吸水率がよいこと、⑤外硬内軟性に富むこと、などの条件が必要で、生産量の限られるとても高価なお米。
日本酒ブームの昨今とはいえど、その生産量は原料米の約3%ほどの量にしかなりません。
有名どころでは、兵庫県の「山田錦」や、新潟県の「五百万石」、長野県の「美山錦」等々。
日本酒を飲まない方でも、一度くらい耳にしたことがあるのではないでしょうか。
また王道の酒造好適米の他にも、各県で開発された新しい品種や復活米で醸した日本酒も今はたくさんあり、
米の違いを多種多様に楽しむことができます。
酒米の場合、ワイン造りにおけるブドウのように明確な香味の違いが出るわけではありませんが、
それでも口に含んだ時の旨味の広がり方や、味わいの伸び方にそれぞれの個性があるんですよ。
はい!そして我が群馬県はというと、
「舞風」「若水」などの酒米がありますよー!(←地元アピール)
特に「舞風」は、群馬県で開発されたKAZE酵母を使って“オール群馬”の地酒として絶賛売り出し中です。
ヨロシクね!
http://oh-bento-labo.com/menberblog/2015/06/29/35
(※参考記事)
ぜひ日本酒を買う機会がありましたら、使われている“酒米”にも注目してみてくださいね!
縁のある土地のお米が使われていたりなんかすると、きっと嬉しくなってしまうはずですよ。
さ、今日は大根の煮物で一杯飲むことにします。
皆さんも楽しい晩酌を!
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金 伽倻(キン・カヤ)
唎酒師/酒匠/日本酒学講師
群馬県在住
【優しさの酒肴】
【優しさの酒肴】
明けましておめでとうございます。
注がれるがままに酒を呑み!ご馳走を前に一瞬たりともひるむことなく!
あげくスカートがきつくなったのは暖冬のせいだ!と、新年早々、
地球に理不尽極まりない言いがかりをつけている金カヤです。
お弁当と日本酒を愛する皆さまにおかれましては、楽しいお正月を過ごされましたでしょうか。
家族でおせち料理を囲んだり、久しぶりに会う甥っ子や姪っ子たちの成長に驚いたりと、
お正月の明るく温かい風景が私のタイムラインにもたくさんアップされていました。
“鴨中”(※)の私はといえば、やはり今年も鴨汁と鴨ロースをせっせと作っておりましたよ。
(※“鴨中”の意味が分からない方は、前回の記事をご参照くださいませ。
http://oh-bento-labo.com/menberblog/2015/12/16/123)
今年は奮発して岩手がものロースに。
ジューシーさが格段に違いますね。
漬け込んで残ったタレで炊き込みご飯を作っても美味しいです。
美味しくお酒を飲むには、やはり美味しいつまみが必要不可欠なのですよね〜。
毎日色々と飲んではあれこれ作りますが、最近のヒットは百合根とホタテを山椒をきかせて甘辛く炊いたもの。
百合根もホタテも山椒も大好きな私にとっては、
もうそれだけでワンダフルでトレビアンな組み合わせなわけですが、
そこに日本酒のぬる燗なんか合わせちゃった日にはもう、
赤城山の頂上に登って「山の神様、海の神様、ありがとーーーっ!」と叫ぶ勢いですよ。
そして、家飲みも良いですが、外飲みも楽しい。
(アンタはどこで飲んでも楽しいんでしょ、というツッコミはなしでお願いします。)
何と言っても、知らないお酒に出会えたり、プロの作る料理を堪能できるのが外飲みの醍醐味ですよね。
はい!こちらは、料理家の堀澤さんのお店「ザブン」(群馬県高崎市)のお料理です。
おいてあるお酒も、日本酒、日本ワイン、クラフトビールと、思わずニヤリとしてしまう品揃え。
写真を撮りながらも、胸の高鳴りを抑えることができません。。。
この日はイベントにオジャマしてきたのですが、昔ながらのお惣菜から今風アレンジ料理まで、
一つ一つに丁寧な下ごしらえと手間暇が垣間見える、素晴らしいお料理でした。
美味しいのはもちろん美味しいのですが・・・なんというか、ただそれだけではなくて、
食材への愛情がものすごく感じられるのです。
俺が美味しくしてやるから皆に喜んで食べてもらえよ(と堀澤さんが言ったかどうかは未確認)、
という優しさがほんわりと伝わってくる感じ。
たくさんのお料理が出ましたが、写真が撮れたものをいくつかご紹介したいと思います。
()内は、説明兼私の胸の内です。
(自家製の白菜漬けと、もやし、鶏肉などを合わせたもの。酸味が出始めた白菜漬けが全体に深みを出し酒が進む。)
(和風定番料理の白和え。青菜に浸ませてある出汁の加減が超絶うまし。
和え衣のコクとなめらかさのバランスが素晴らしく酒が進む。)
(八つがしら?海老芋?のような“ほっくりムチン系”のマッシュに私が愛してやまない百合根が忍ばせてあり、
そこにカリカリに炒ったじゃこを合わせて食べる。斬新すぎて酒をがぶ飲みしてしまう。)
(油揚げにシラスとチーズを挟んで焼いたもの。
油揚げもシラスもチーズもうちの冷蔵庫に入っているのにこの発想はなかったー!と、酒をどんどん飲んでしまう。)
(豚バラとじゃが芋に少し固めの餡がかかり、その上に柚子がたっぷりと。
豚肉は群馬の“赤城もち豚”を使っているとのこと。
豚バラ苦手なのにメチャメチャ美味しいのはどうしてー(号泣)と、ビールのおかわりをしてしまう。)
(シンプルな大根の煮物。一口食べて固まる。大根てこんなに美味しかったのか!と酒が進む。)
これ以外にも、干し柿に発酵バターを添えたもの
鴨に衣と山椒を絡めて焼いたもの、鮪の漬けのタタキ(?)のお寿司
増田和牛の牛脂で作った焼きそば等々、
何を食べてもブレない味の落としどころに感動の連続でした。
堀澤さんのお料理。
味覚の原点を知りたいと思うほどに、妥協はないけど優しく、
手間はかかっているけど堅苦しくなく、
何よりも味あわせのセンスが絶妙で心を揺さぶられました。
いつか私もこんなお料理とお酒でおもてなしができるといいなぁ!
ワクワクと思い描きつつ、ほろ酔い気分でお店を後にした高崎の夜でありました。
【ザブン】
群馬県高崎市通町141−3 デルムンドビル 1F
https://www.facebook.com/tachinomizabun/